(素敵生活2018年1月 72号より)
東京都中央区の臨海部に位置する「佃スカイハイツ」は、湾岸開発の中心として発展する地域の先駆的マンションです。不具合が増えていた玄関扉改修を、単なる更新にとどまらず、付加価値をもつグレードアップ工事の一環として実現しました。
佃スカイハイツ
所在地:東京中央区
竣工:1979年
「佃スカイハイツ」では以前から玄関扉に関して「重くて開けづらい」「ドアクローザーに不具合がある」「外見の古さが気になる」等の居住者の声が寄せられていました。そうした声が少しずつ増えていたなかで、2016年7月の理事会で改修工事が検討議題となりました。その後11月の管理組合総会で決議・承認され、2017年8月22日から9月1日の11日間の日程で全38戸の玄関扉の交換工事が行われました。
「居住者の皆さまには、古くなり劣化した扉を交換するだけでなく、新しい機能がプラスされ快適性を高めるグレードアップ工事の一環としてご提案したことで、より多くの賛同が得られたと考えています」と管理会社フロント担当者。
工法には既存の玄関枠に新しい枠をかぶせるカバー工法を採用。既存の枠をそのまま使うため、内装や外装に手を加える必要がなく、1戸あたりの工期も半日と短くて済みました。また新しくはめ込むため歪みがなくなり開閉の不具合やすき間もできにくくなりました。加えて次のようなメリットもあります。
❶操作性の向上
これまではドアノブにしっかり力をこめないと開閉できなかった重い扉が、プッシュプル錠の採用により軽い力で押す、引くだけで楽に動かせるように。ドアクローザー(A内側)も一新し、軋みのないスムーズな開閉を実現しました。
❷セキュリティ性能の向上
不正侵入を防ぐためハンドルは二重ロックとし、さらにL型カバー(B内側)取り付けにより錠前をしっかりガード。
またピッキングに強いディンプルキーを採用し、ドアスコープ(C内側)は視界160度から広角な180度視界防犯型に変更。内側には覗き見を防ぐカバー付きです。さらにサムターン回しを防ぐ新収納式サムターンを採用しました。
❸対震性能の向上
地震で玄関枠が変形した場合でも、対震丁番(D)に内蔵されたスプリングが縮むことにより、変形した枠とのひっかかりが最低限に抑えられ、扉を開けやすくします。またドアガードは地震時に上下の歪みがあっても開閉できるように設計された対震ドアガードを採用しました。
❹居住性の向上
これまでの鉄板の扉に対して、厚みが36㎜の表面材に化粧鋼板を使用した扉を採用。枠の4方向に気密ゴムを使用しているため、すき間風の流入を防いで冬の防寒を実現しました。
一方、今回の工事実現を後押ししたのが「耐震診断」による判定です。「佃スカイハイツ」では、現状のマンションが旧耐震基準と新耐震基準のどちらにあてはまるのかを判断する耐震診断を2014年に行いました。
東日本大震災を受け、建物の安全性を確かめるのが目的でしたが、万が一新耐震基準に適合しなければマンションの価値を下げるリスクもあるなかで、非常によい結果を得ることができました。
この新耐震基準を満たしていることが国交省の住宅ストック循環支援事業補助金の申請条件であり、全工費の1割強の補助金を受けられることとなりました。
※本補助金の交付申請の受付は終了しています。
玄関扉のデザイン面では、カラーの選定にあたり、理事会が候補の中から3色に絞り込んだ上で、居住者に提示してアンケートを実施。その結果を受けて扉カラーは重厚感のあるメタリックアイアンブルーが選ばれました。
工事終了後の居住者の方々の評判は上々で「力をかけずにスムーズに開閉できるようになった」「外観的によりマンションらしくなった」「防犯性が高まった」などの声が多く寄せられました。また建物全体がイメージアップし、居住性も高まることから資産価値の維持・向上にもつながりました。
「佃スカイハイツ」では、今回の玄関扉改修工事の成功を機に、居住者から要望の多いベランダのサッシの交換も来年度の実現をめざして検討中です。その際も新たに断熱性の高いペアガラスを採用するなど、グレードアップの視点から改修を進める予定です。
「ヨーロッパでは家を100年もたせる伝統があります。家を時代に合わせて適宜手を入れながら長く大事に使う。そうした発想で大切な資産価値の維持・管理に努めていきたいと思います。」