(素敵生活2020年1月 80号より)
13棟の建物が緑豊かなランドスケープの中にたたずむ深沢ハウスでは、一昨年から昨年にかけて、地下駐車場および各棟エントランスの自動ドア化を実施。
その中心的役割を担われた第14・15期理事長の山口さんにお話を伺いました。
従来、各棟の風除室(オートロック等がある玄関前の小スペース)の内側ドアが自動、外側ドアが手動だった深沢ハウス。昨年の工事で、ほぼすべての建物入口を自動ドア化しました。
きっかけとなったのは従来の手動ドアにおけるヒンジ(蝶番)の老朽化。
また、重厚なドアの開閉に負担を感じるシニア世代の声や強風でドアが煽られ子どもたちに危険が及ぶ場所があるとの危惧も背景にあったそうです。
深沢ハウスでは一昨年、荷物を持って通ることの多い地下駐車場入口の自動ドア化も行われており、合わせて約30カ所の施工という大規模なプロジェクトとなりました。
もちろん工事実施にあたっては様々な意見が出るもの。そこで深沢ハウスでは一旦全体を予算化しつつ工期を2期に分け、1期は必要性が高い地下駐車場のドアなどから工事を施工。その後、皆さんの意見を聞いて2期目の実施を検討するという方法が取られました。
実際のところ、1期工事を終えて集まったのは大好評の声!山口さん自身も新しいドアの使用感に「我々は普段、ドアの開閉にこんなにストレスを感じていたのか!」と驚いたそうです。
設計上必須だったのは全棟バリアフリーを維持するための開口寸法の確保。今回採用された『カバー工法』は工期やコストを抑えられる反面、開口部が既存ドアより若干狭まる場合が多いので、車いすユーザーにも不便のないよう検討が重ねられました。
工事は動線上の優先順位の高い場所から順次施工。それぞれの自動ドア化は1日、天井や床など付帯工事は約1週間。作業中も終始通行可能とし、居住者の負担を極力抑えました。
「皆さんからお預かりしている資金を使うので、全員に納得いただいた上で進める意識を大切にしました」と山口さん。772戸という大規模マンションの理事長として数々のプロジェクトに携わる中で『何のためにやるのか』を皆さんに丁寧に説明することや、一部でなく全体の利益となるよう公平性も大切に考えていたとのこと。
深沢ハウスは理事会や自治会の活動が活発なマンション。折々の行事開催や、広報新聞の発行など居住者の手で豊かなコミュニティが醸成されています。その中で培われたつながりもまた合意形成のための大きな力となったのではないでしょうか。