マンションの通信を光配線方式にすれば快適で安心な暮らしが実現し、資産価値の向上にもつながります。導入にあたっての課題について実際の事例を交えながら分かりやすく紹介していきましょう。

光配線方式を導入すれば、住戸内のインターネット環境が向上し、高速で安定した通信が可能になります。ゲームや動画の視聴はストレスがなくなり、在宅ワークやオンライン授業も安心。インターネットを家族みんなが同時に快適に利用することができます。


マンションでは、既存の電話回線を利用するVDSL方式が使われているケースが多くあります。VDSLの通信速度は最大100Mbps程度とされていますが、共用部から各住戸まで光回線を直接引き込む光配線方式に切り替えると、1Gbps〜10Gbpsクラスの高速通信が安定して利用できるようになります。
VDSL方式

マンション共用部の親機と各住戸の子機を電話線でつなぎ、インターネットを利用します。通信速度は最大100Mbps程度とされており、利用が集中すると速度が低下することがあります。
光配線方式

光配線方式は、共用部から各住戸まで光回線を直接引き込む仕組み。各戸が専用の光回線を占有できるため、他の住戸の利用状況に影響されず、高速で安定した通信を利用できます。電気的ノイズにも強く、将来性にも優れています。

光配線方式へ切り替えるには、まずマンションに光回線を通せる配管があるかどうかを調査する必要があります。配管が無い場合、外壁や共用廊下などを利用する「露出配管」にて新たなルートを確保します。配管の色や配置を工夫することで美観を大きく損なわずに施工することも可能です。回線工事と同時に、管理組合が一括で全戸分のインターネット契約を行い「全戸一括光配線方式」とすることで、通信費を安価に抑えることもできます。

1998年築の芦屋コンチェルト(兵庫県芦屋市)は、2025年3月、インターネット通信環境をVDSLから全戸光配線方式へ刷新しました。導入検討のきっかけから住民のみなさんへの説明、費用負担の実際、工事の内容と進め方、導入後の住民の評価や変化までを、管理組合理事長に詳しくお聞きしました。
芦屋コンチェルト(兵庫県芦屋市)



マンションの地下に設置されたキャビネット内には、MDF(主配線盤)を始め電話線やテレビ受信機器などの通信関連装置が収められている。

こちらがMDF。光回線を分岐させて、各フロアや住戸へと届ける。

MDFから露出配管へと伸びる光回線(写真中央の白く細い線)。写真下のグレーの太い線は既存の電話線。

地下のMDFから1階まで共用部の壁にステンレス製の露出配管を設置。この管の中に光回線を通している。

露出配管を共用部に設置する際は、共用部の壁面の色となじむような塗装が施される。

地下から1階まで露出配管の中を通った光回線の一部は、1階の共用部の天井裏に通されている。

共用部の天井裏へ通された光回線は、既存の電話線などと同じ経路を使って上の各フロアへと通されている。

こちらは共用部の廊下の天井からスラブの穴を通じて上のフロアへと各種配線が通されている例。光回線もこの経路が使われている。

光回線を各戸へ通す方法は、マンションの構造や配管の状況によって異なります。施工事例の一つとして、MDFから共用廊下のメーターボックス(電気やガスのメーターが入る箱)までは既存の弱電用配管を活用し、そこから廊下壁を伝う露出配管を各戸近くまで延ばし、さらにエアコンダクトを通して光回線を室内へ引き込んだというケースもあります。
光回線の引き込み手順

光回線(光ケーブル)は弱電管を通じてメーターボックスまで通っている。

メーターボックスの上の方から光ケーブルを露出配管の中に通す。

廊下壁に設置した露出配管を通じて光ケーブルを各戸の近くまで延ばす。

露出配管の末端からエアコンダクトの中に光ケーブルを通し、室内に引き込む。
理事長のコメント
導入のきっかけは、NTTから全戸光配線導入の提案を受けたことでした。もともと不満の声が上がっていた通信環境の向上に加え、月々の通信利用料も下がる見込みがあったため、理事会でも前向きに検討を進めました。
施工では、地下のMDF(マンション内の通信配線を収容する主配線盤)から各フロアへ光回線をどう通すかが課題でした。基本的には天井裏などを利用する経路計画とし、一部は露出配管を採用。マンション外観への影響を懸念する声も一部にはありましたが、事前に写真で仕上がりを共有し、住民の理解を得ながら進めました。
通信環境の改善によって、「以前よりテレワークがしやすくなった」という声もあるなど、住民からの評価は上々です。また、資産価値の向上によって買い手や借り手の希望者が増えています。特にネット環境を重視する若い世代の入居希望者が目立つようです。