伝統工芸品から工業製品まで、さまざまな「ものづくり」が盛んな静岡県。今回は中部~西部(遠州)にスポットを当てて、日常をすてきに彩る工芸品と注目のエリアなどをご紹介します。
CONTENTS
日本の美しいものづくり
静岡挽物
ろくろや旋盤を使って木材を削りだし、器やインテリアを作り上げる挽物(ひきもの)。「静岡挽物」は1864年、銘木商人の酒井米吉が箱根の挽物職人に技術を教わり、静岡市で開業。さらに技術を広めたとされています。
現在は、静岡県郷土工芸品に認定され、やわらかな曲線を描く技術と木目のあたたかな美しさに定評があります。職人の数は減少しているものの、伝統の技は若手にも受け継がれ、新たな感性が光る作品に注目です。
一つひとつ、丁寧に木材を挽いて作られた「静岡挽物」の食器。見た目の美しさのみならず、なめらかな触り心地で手馴染みがいい逸品。
一つひとつ、丁寧に木材を挽いて作られた「静岡挽物」の食器。見た目の美しさのみならず、なめらかな触り心地で手馴染みがいい逸品。
メインはもちろん、プチフールなどを載せてもきれいなプレート
脚付きのサラダボウルは、インテリアへのアレンジも抜群
高さのあるプレートでケーキなどがより華やかに
食卓に馴染みつつ、彩りを添えられるフラワーベース
モチーフは碁石。ドイツ人デザイナー×静岡の若手職人による作品
洗練されたフォルムが木立のようなフラワーベース
製法
木材をろくろにセットして回しながらノミを使って削り出していく。その繊細さは、舞い散る木くずの細さからもわかるほど。職人の技術はもちろんのこと、作品に向き合う姿勢が表れている。
遠州織物
浜松市を中心とした静岡県西部=遠州で生産される織物を総称して「遠州織物(えんしゅうおりもの)」と言います。江戸時代に誕生して以来、高度な技術の発展とともに時代に合わせた多種多様な織物が作られてきました。なかでも歴史のある「遠州綿紬(えんしゅうめんつむぎ)」は昔ながらの製法による独特の柄と風合いが魅力的で、現代の暮らしにも取り入れたい織物のひとつです。
背景と製法
背景
天竜川の豊かな水と長い日照時間により綿の栽培に適している遠州地域。さらに天竜杉など良質な木材で織機をつくれたことや、南アルプスから吹き降ろすからっ風が洗い加工後の乾燥に役立つなど、織物にとって好条件が揃っていました。
江戸時代中期、上野舘林から遠江浜松の藩主となった井上正春氏が結城縞の技術を伝えたことで大きく発展。明治時代には自動織機が開発され、昭和には洋装化が盛んになったことであらゆる「遠州織物」が織られていったそうです。
製法
遠州地域で最も古くから織られていたとされる「遠州綿紬」は、現代でも旧式のシャトル織機で丁寧に織られています。糸を一定の長さに巻き束ねる「かせ上げ」から染色、糊付けなど多くの工程を経た後、機織りが行われます。
その長さは1日で2反(約25m)。ゆっくりと織り上げることで、ふんわりとしたやわらかな質感の生地になるそうです。
織りなす魅力
遠州織物のなかでも、別名「遠州縞」と呼ばれる遠州綿紬はその名の通り、タテ縞が魅力です。織る前にタテ糸を並べて整える「整経(せいけい)」での本数や色合い、配列により柄が決まります。また、織り上げる際に使うヨコ糸の色によっても仕上がりが変わります。
四季を感じられる和の色彩を用いた糸を重ねることで、見た目にも風合い豊かな綿紬が織り上げられます。
遠州織物のなかでも、別名「遠州縞」と呼ばれる遠州綿紬はその名の通り、タテ縞が魅力です。織る前にタテ糸を並べて整える「整経(せいけい)」での本数や色合い、配列により柄が決まります。また、織り上げる際に使うヨコ糸の色によっても仕上がりが変わります。
四季を感じられる和の色彩を用いた糸を重ねることで、見た目にも風合い豊かな綿紬が織り上げられます。
遠州織物のある暮らし
幅広く展開し、色柄も豊富な遠州織物はあらゆるファブリックとなっています。キッチンで身に着けるスリッパとエプロン、お出かけの時に持つバッグ、クッションやベッドのカバー…。お気に入りの色柄のアイテムや生地を見つけて、暮らしのアクセントとして、また日常に寄り添うインテリアとして取り入れるのもおすすめです。
静岡散策
静岡県中部〜西部のおすすめのスポットと名物をご紹介!
奥大井湖上駅
長島ダムの接岨湖(せっそこ)にある半島の無人駅。対岸の展望台から見るとまるで湖上に浮いているような注目の絶景スポットです。
中田島砂丘
写真提供:浜松・浜名湖ツーリズムビューロー
遠州灘の海岸に広がる日本有数の大砂丘。冬には季節風が描く「風紋」が美しく、映画などのロケ地としても知られています。
写真提供:浜松・浜名湖ツーリズムビューロー
写真提供:浜松・浜名湖ツーリズムビューロー
浜松城
2023年の大河ドラマの主役となる、天下人・徳川家康が夢をつかんだ場所として話題の出世城。2022年12月末頃には外装改修工事も終わり、堂々たる天守閣が出現し、隣接地には大河ドラマ館がオープンします。(2023年1月22日プレオープン、同年3月18日グランドオープン)
元城町東照宮
徳川家康が浜松城を築くまで住み、若き日の豊臣秀吉も訪れた引間城(ひくまじょう)の跡地にある、通称「出世神社」。「最強パワースポット」としてテレビ番組でも話題になり、参拝者が多く訪れています。
初生衣神社(うぶぎぬじんじゃ)
平安時代の久寿2年(1155年)より850年以上、天照大御神(あまてらすおおみかみ)がお召しになる「御衣(おんぞ)神御衣(かんみそ)」を織って毎年伊勢の内宮に奉献している由緒有る神社で、遠州織物の聖地として親しまれています。七夕の織姫様として知られている天棚機姫命(あめのたなばたひめのみこと)をお祀りしています。