レールに沿って窓をスムーズに動かす役割を果たしている戸車。この部品が劣化すると、窓の開閉が重くなり、レールも傷みやすくなります。今回、バルコニーに面した掃き出し窓と網戸の戸車を全戸一括交換された取り組みについてディオ・フェルティ平野の坂口さんにうかがいました。
ディオ・フェルティ平野
地上10階、地下1階建のベージュの外観。美しく整備された植栽やエントランスが印象的な加美地域で人気のマンションです。
管理組合がサッシの戸車交換の検討を開始したのは、理事会で「窓を開閉しづらい」という声があがってからです。そこで、長谷工コミュニティに提案を依頼。協力会社が当時の理事長宅のサッシ調査を実施し戸車を試験的に交換しました。
戸車交換工事について
戸車交換工事 <掃き出し窓>
工事はバルコニーで行い、一住戸30分~1時間程度で終了します。
ガラス窓やアルミサッシの枠は耐久性が高く、約50年は使用可能です。一方、それらの開閉をサポートする戸車は、樹脂部分が摩耗するので経年劣化は免れません。使用条件によりますが、交換時期の目安は築25年程度。戸車が劣化し重くなった窓を力任せに開閉することで、共用部のレールが変形。サッシを丸ごと交換する修繕工事が必要になると、大きな費用がかかります。戸車交換は日常的な開閉の快適性のためだけでなく、レールの保全やサッシの長寿命化に有効な窓のメンテナンスだと理事会で情報共有がなされました。
※劣化した戸車や不適合戸車の使用で変形したレール
当時築26年で、戸車交換には適切な時期でもあり、窓の開閉における不具合の解消とレール損耗は戸車交換で予防できると判断。2022年2月の総会で、使用頻度の高いバルコニーに面した掃き出し窓と網戸の戸車全戸一括交換が決定されました。居住者の皆さまも日頃の窓の開閉に少なからず違和感があったようで、速やかな合意形成に至ったそうです。
3月に工事日程案内が配布され、4月中旬から約1週間で全戸の工事が完了。クレセント(鍵)交換、ガラス押えゴムの交換などの個人負担でのオプション工事も同時に実施。費用の面でも、マンション全体で一括交換することにより、戸車の製造費や工事費を削減できました。
施工後、坂口さんは驚くほどスムーズで静かに開閉できることを実感されていると言います。
工事の際には戸車交換はもちろん、窓の建付けやレールの状態を点検し、必要に応じて左右の高さを微調整するなど、適切な処置がなされました。プロによれば、ホームセンターで購入できる汎用戸車を使って個人で交換すると、本来の機能を発揮できず、レールを傷めてしまうことがあるそう。また、レールの掃除を定期的に行うことで、戸車を長持ちさせることにつながるそうです。
2023年は2回目となる大規模修繕工事が予定されており、理事会や修繕委員会の話し合いも本格化します。ディオ・フェルティ平野の暮らしやすさと資産維持に対する意識はますます向上しているようです。
戸車は千種類以上もあり、プロでないと適合する戸車を見つけるのが困難
汎用戸車のリスク
年数が経過した戸車の手配は困難であるため、汎用性のある戸車も一部で流通していますが、使用には注意が必要です。代用した結果、レールを傷める原因となってしまう可能性があります。
藤代スカイハイツ 施工後3年経過して
当時、携わった皆さまにお話をおうかがいしました
藤代スカイハイツ
築年数も経ち、窓の滑りが悪いとの居住者の声が高まり、紹介いただいた長谷工コミュニティの協力会社に修繕方法や費用を相談したのがきっかけです。
実は以前にも交換を検討したのですが、当時はサッシメーカーに適合する戸車が足りないとのことで諦めたいきさつがあります。今回の提案では既存と同型の戸車を製造できるということで、それなら全戸と集会室を一斉に交換しましょうと総会に諮り、異論がなく決定。約1カ月半で全工期が完了しました。
交換して3年経ちましたが、集会室を含め問題なく快適に使用できています。滑りを悪化させたり劣化を進行させる要因のひとつは、レールの溝に溜まったゴミを放っておくことにあるのもわかり、交換後は普段からレール掃除に気を付けるようになりました。この一括交換工事は、戸車の働きやその大切さにあらためて目を向けるよい機会にもなったと思っています。今後、網戸の戸車交換も前向きに検討中です。