2021/01/13

インテリア

日本の美しいものづくり「八重山ミンサー」

【特集】

伝統の技と 新しい感性で 暮らしを照らす

すてき度

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心を織る

愛を謳う、伝統の絣(かすり)模様。

八重山ミンサーは、沖縄県の竹富島や石垣島で織りつがれる伝統の織物で、素朴な風合いや独特の絣模様が特徴です。その源流は、島の日常着であった藍一色の「ミンサーフ(ウ)」という帯。繰り返される五つと四つの絣模様は、女性たちが愛する人を思い「いつ(五つ)の世(四つ)までも、末永く...」という祈りを織り込んだものと伝えられています。

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守り、育てる

彩りあざやかに。八重山ミンサーの新しい世界

洋服の時代を迎え、一度は衰退しかけたミンサー文化ですが、伝統を守りつつ革新を志す新しいスタイルがその歴史をつなげました。特有の絣模様と手仕事の風合いはそのままに、あざやかな色彩やモダンなデザインを取り入れた洋服やバッグ、インテリアアイテムなどが職人の手で織り上げられ、国内外を問わず愛されています。

大切にしている三つのこだわり

熟練の手技、丹念な手作業
心にも優しい、天然素材
時代にマッチした、伝統工芸品

伝える

島々の風土が生んだ手織物 八重山ミンサー

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八重山ミンサーの起源について詳細はわかっていませんが、八重山地方における綿の栽培は、琉球王朝時代の17世紀ごろ始まったと伝えられています。
人々の手から手へ織り継がれたミンサーは現代も愛され続け、手括りの絣模様があしらわれた藍色の帯は、八重山の伝統行事に欠かせない衣装となっています。

手しごと

手から手へ。職人技の連携

伝統的な八重山ミンサーは、およそ30もの工程を経て完成します。そのほとんどが手しごとによるもの。それぞれの工程を専門の職人が分業し、1反の布が織り上げられます。

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意匠設計にはじまり、「絣括り(染色の際、絣模様の部分だけ染料がつかないよう糸でくくる作業)」、「糊張り(綺麗な柄を出すために糸を糊付けする作業)」など、多くの作業を経て生まれる八重山ミンサー。その最後の工程となるのが「製織(織り)」です。織子さんと呼ばれる専門の技術者が、丹精を込めて織り上げています。
現代においても織子さんには女性が多く、幅広い世代の方々が活躍中。手から手へと技術がつながれています。

 

製作工程

多くの下準備工程がある八重山ミンサー。大きく分けて意匠設計、糸の種類ごとの染色、糊張りや「綜絖通し」といった糸の準備などが挙げられます。さらに、織りあがった布は多くの加工作業を経て完成品となります。

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1. 染色(せんしょく)

糸を精錬し細かい汚れを落とします。その後、糸を経地糸(たてじいと)、経絣糸(たてかすりいと)、緯糸(よこいと)などの種類ごとに分け染色します。柄を織り出すための絣糸の染色は特に繊細な作業です。

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2. 糸繰り(いとくり)

精錬、染色、糊付けなどを済ませ乾燥させた綛糸(かせいと)を、3〜5綛ずつボビン(管)に巻き取ります。

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3. 整経(せいけい)

経糸(たていと)の長さを整えます。意匠設計に添ってボビンを並べ揃えて、色ごとに糸の本数と一定の長さを取ります。製織時の糸のたるみや絣のずれを防ぐ大切な作業です。

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4. 糊張り(のりばり)

糸に糊を付け、張り伸ばします。40メートル余りの糸を糊張りするための「糊張り場」は広大な空間。糊を乾燥させるための時間は2日間に及ぶこともあります。

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5. 絣括り(かすりくくり)

八重山ミンサー特有の柄を生み出す作業です。染色の際に柄の部分には染料が染みないよう、絣糸を手作業で括っていきます。正確に固定することで形の良い絣が織り出されます。

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6. 仮筬通し(かりおさどおし)

図案に添って経糸(たていと)を割り振る作業。経糸をそろえるための筬(おさ)という隙間に糸を1本ずつ通します。製織時に一度取り外すため「仮筬通し」と呼ばれます。

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7. 巻取り(まきとり)

製織前の下準備の最終段階です。一定の張力を保ちながら、すべての経糸(たていと)を揃え巻き取ります。複数種の糸の張り具合を揃える必要があり、熟練の技が必要とされます。

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8. 綜絖通し(そうこうとおし)

巻き取った経糸(たていと)を、製織のための機(はた)に乗せ、綜絖(そうこう)と呼ばれる糸の上下運動のためのパーツに通します。糸の通し方で織物の風合いに変化を持たせることもできます。

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9. 製織(せいしょく)

機(はた)の上にセッティングされた経糸(たていと)に緯糸を通していく製織。「織り」とも呼ばれる作業です。専門技術者の織子さんが丹念に織り上げてゆきます。

出会う

八重山ミンサーを見る・作る・買う

産地である石垣島や竹富島はもちろん、沖縄本島などにも八重山ミンサーのお店があります。石垣島には貴重な資料や制作工程を見学したり織物体験ができる施設も。また現在はインターネット販売も充実しており、遠く離れた場所からも八重山の文化を楽しむことができます。

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<取材協力>

みんさー工芸館
TEL.0980-82-3473

〒907-0004 沖縄県石垣市登野城909

展示資料室・入館料(無料)
手織り体験(予約制)

石垣島の美しい風土の中にたたずむ「みんさー工芸館」。染色資料展示室や工房見学、体験プログラムなど、様々な角度からミンサーの歴史や技術について深く学べる施設です。

ミンサー文化の発信拠点である「みんさー工芸館」を営むのは、今回、取材にご協力いただいた織元「あざみ屋」。八重山ミンサーの継承に大きな役割を果たす企業で、伝統の逸品はもちろん、現代のファッションやインテリアの感覚を取り入れたアイテムも豊富です。

銀座わしたショップ 本店 店舗案内

沖縄県の食品や工芸品をはじめ、約4000アイテムを揃えた公式アンテナショップです。沖縄の料理が味わえるコーナーもあります。

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