一般に戸建てに比べて防犯性能が高いといわれているマンションですが、一方で敷地が広く、多くの人が出入りするがゆえのウイークポイントも存在します。マンションで安心・安全に暮らすための効果的な防犯対策について、重要なポイントを解説していきましょう。
マンションの防犯は ①目、②時間、③光と音の3つがポイントになります。
目…不審者は顔を見られるのを嫌う
不審者は人の目を嫌います。そのためには居住者相互のコミュニケーションが何より大切。管理員、居住者の挨拶や防犯カメラ、モニター付きインターホンの設置などが犯罪抑止効果を高めます。
時間…犯罪者は侵入に時間が掛かるのを嫌う
住宅内への侵入に5分以上かかる場合、7割以上の泥棒は侵入をあきらめるといわれています。侵入に時間をかけさせるようにするには玄関ドアのワンドアツーロック化や窓の面格子、ガラスに貼る防犯フィルムや防犯ガラス等が効果を発揮します。
光と音…犯罪者は光や音を嫌う
光や音も防犯の抑止効果を高めます。建物周辺や通路に照明やセンサーライト、赤外線防犯センサーや防犯アラームなどを設置することで不審者の侵入を抑止する効果が一層高まります。
POINT 01
三つのゾーンで部外者の侵入を防ぐ
マンションの防犯は、三つのゾーンで部外者の侵入を防ぐのがポイントです。第1ゾーンはマンションの敷地、第2ゾーンはマンションの共用部(建物内)、第3ゾーンは専有部(住戸)です。まずはそれぞれのゾーンでどんな犯罪やいたずらが発生するリスクがあるのかを知っておきましょう。
POINT 02
第1ゾーン(マンション敷地)への侵入を防ぐ
自転車の盗難や車上荒らし、落書きなどを防ぐには、まず、敷地内へ部外者を侵入させないこと。しっかりした設備や対策を施すことで、侵入しにくいマンションであることをアピールできます。
この物理的対策が必要
侵入禁止標識
「関係者以外立ち入り禁止」の標識は、不審者の侵入を防ぐ上で有効な手段です。敷地の出入口に設置することで、管理されたエリアであることを明確に示し、防犯意識の高さを伝えられます。古くなった標識は早めに交換しましょう。
敷地内への立ち入り禁止を明確にアピールする標識。
フェンス高さ
不審者の侵入を防ぐためには、1.8m以上のフェンス設置が効果的とされています。高さがあることで乗り越えるのに時間と労力がかかり、犯行をためらわせる要因になります。見通しや強度にも配慮し、適切に整備しましょう。
自動施錠扉への改修
敷地境界の出入口は防犯のため施錠が必要ですが、緊急時に備え内部からは容易に開けられる設計が重要です。扉が閉まると自動的にロックされる仕組みを備えた「自動施錠扉」への改修で、防犯性と避難性の両立を図りましょう。
照明・防犯カメラ
マンションの防犯対策には、敷地内の死角を無くすことが重要です。死角は犯罪の温床となりやすく、防犯カメラや照明の設置により見通しを確保することで抑止力が高まります。適切な配置が効果を左右します。
侵入者を監視するカメラ。
センサーライト
POINT 03
第2ゾーン(建物内共用部)への侵入を防ぐ
第2ゾーンはここが弱い!
共用部内への侵入防止において欠かせないのがエントランスのオートロックです。まずここをしっかり押さえたら、あとは通用口や共用廊下の手すりの乗り越えなどのセキュリティ対策を検討しましょう。
この物理的対策が必要
インターホン連動オートロック
建物内への不審者の侵入を防ぐためには、オートロック設備の導入が有効です。エントランスに設けたオートロックは、インターホンと連動させることで、来訪者の承認なしに入館されることを防ぎます。部外者の無断侵入を抑止し、居住者の安心と安全を高める最も重要な防犯対策です。
自動施錠の門扉
外部階段などへの出入り口に自動閉鎖扉を設けることは非常に有効です。建物から出る際に開錠したあとは自動で施錠されるため、鍵のかけ忘れを防げます。また、外部から入館する際には鍵が必要となるため、不審者の侵入を抑止する効果があります。
共用廊下手すりのフェンス
共用廊下の手すりからの侵入を防ぐには、外から乗り越えやすい部分にフェンスを設けることが有効です。見通しを確保しつつ乗り越えを困難にすることで、防犯性が向上します。ただし、火災時には消防隊の進入を妨げないよう、構造や設置方法に十分な配慮が必要です。
また、手すりの外側に踏み台になるようなプランター等の設置は防犯性を低下させることになります。
排水管設置の忍び返し
マンションの外壁に設置された排水管は、侵入者にとって足場として利用されやすく、ベランダや外廊下への侵入経路となる恐れがあります。そこで、排水管の途中に「忍び返し(防登器具)」を設置することで、よじ登りを防ぎ、侵入経路を遮断する効果が期待できます。
POINT 04
第3ゾーン(専有部)への侵入を防ぐ
第3ゾーンはここが弱い!
専有部の玄関ドアはメインとサブの錠前を使うワンドアツーロックが理想。錠前はピッキングに時間がかかるピンシリンダーやディンプルキーに交換します。
この物理的対策が必要
ワンドアツーロック
専有部の玄関ドアの防犯性を高めるためには、「ワンドア・ツーロック」への改修が効果的です。これは1枚の玄関ドアに2つの錠前を取り付ける方法で、侵入者にとって解錠にかかる時間や手間が倍増するため、犯行をあきらめさせる抑止力になります。
ピンシリンダー・ディンプルキー
(CP錠)
専用工具で鍵穴を操作して開錠する侵入手口に「ピッキング」があります。この手口を防ぐには、複雑な構造のピンを複数備えた「ピンシリンダー」が有効で、耐ピッキング性能が10分以上あるものが推奨されます。さらに、鍵は複雑な凹凸を持つディンプル錠に交換することで、防犯性が大きく向上します。
CPマークの窓
サッシ窓も住戸への侵入経路として狙われやすい弱点です。その対策として、防犯性能が認められたCP製品のサッシ窓とガラスの採用が有効です。CP*1製品のサッシ窓とガラスに交換することで、こじ破り*2・打ち破り*3・焼き破り*4 といった侵入手口に対して高い抵抗力を発揮します。これらは専門技術者による施工で、最大限の効果を得ることができます。ガラスについては、CP製品のガラスフィルムや防犯合わせガラスが使用できます。窓サッシとガラス双方にCP製品を使用することが効果を最大限に発揮できます。
※上記試験の結果は防犯性能を保証するものではございません
※画像提供 AGCグラスプロダクツ株式会社
POINT 05
住民同士のコミュニティづくりも大事
マンションの防犯では住民同士のコミュニティ形成も重要。挨拶などの日常交流や定期イベント、サークル活動を通じて顔見知りになることで、不審者の早期発見や犯罪発生時の迅速な対応につながります。
また、知らない人にでも挨拶をすることで、犯罪者は見られている・顔を覚えられていると思い犯罪の抑止力にもなります。