2023/02/01

旅・レジャー

親子で行きたい!サステナブルな社会の体験型施設「クルックフィールズ」【前編】

コンセプトは「循環」。大自然のなかで楽しく学べる“限りある資源を回すしくみ”とは?

すてき度

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東京都から車で1時間ちょっと。約9万坪の広大な敷地にたくさんの緑、小さな川、大きな池、そして元気な生き物たち。とても楽しい、気持ちいい! ここは、音楽プロデューサー・小林武史さんが2019年11月にオープンした「KURKKU FIELDS」(以下、クルックフィールズ)。ここでは、「自然がいっぱい」というだけでなく、生きる上でとても大切なことを教えてくれます。ご家族でのお出かけにいかがですか。

※取材写真は2022年7月時点

上下水道設備をすべて自前でつくる

クルックフィールズは「サステナビリティ」や「脱炭素社会」「循環型社会」「自然共生社会」といった、言葉で聞くとイメージしづらいしくみを間近に見て体験できる施設になっています。 たとえば、場内には公共の上下水道は完備されていません……と聞くと、とても不便なのではないかと思われるかもしれませんが、屋内の部分は他の公共施設や商業施設となんら変わりありません。むしろ公共の上下水道を使っていないと聞いて驚くくらいです。クルックフィールズのスタッフ・小林真理さんは次のように説明します。

「場内で使われている上水は井戸水を汲み上げています。ダイニングやトイレなどすべての排水は地下にある浄化槽で、バクテリアの力によって浄化されます。その後、『バイオジオフィルター』を経て、『マザーポンド(母なる池)』と呼ばれる池へと循環していきます。バイオジオフィルターとは植物や微生物など自然の力を使った水質浄化システムのこと。水が栄養吸収力の高いヤナギやクレソンなどの植物やレンガなどの層を少しずつ、ゆっくり通ることで富栄養の状態から生き物が住むのに適した水質になっていきます」(小林さん)

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(写真上段)植物でできた水質濾過システム、バイオジオフィルター
(写真下段左)敷地の真ん中に位置する、森に囲まれたマザーポンド。
自然を感じながら生き物を観察する散策コースにもなっている

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(写真上段)植物でできた水質濾過システム、バイオジオフィルター
(写真下段左)敷地の真ん中に位置する、森に囲まれたマザーポンド。
自然を感じながら生き物を観察する散策コースにもなっている

水を汲み上げる動力となっているのは、池の近くに設置された太陽光パネル。ほかにも敷地内には、計2.4MW(メガワット)の発電量を誇るソーラーパネルが設置されており、場内で使われる電力の70~80%をまかなっています。
この太陽光発電システムの運用もあり、CO2排出量を抑えながらも、快適な冷暖房施設を用意することができています。
これらの上下水道設備、太陽光発電のマイクログリッド化設備があることで、災害時に公共のインフラが機能しなくなった場合でも、クルックフィールズは安心・安全を確保できます。そのため万一のときは周辺地区の被災者を受け入れる、「災害時における応急活動の協力に関する協定」を木更津市と結んでいます。

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牛がのどかに放牧された斜面に並ぶソーラーファームの光景は、自然と共生しながら未来に向けた
新しいエネルギー環境を実践するクルックフィールズの象徴のひとつ。そのふもとにはアート作品も展示されている

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牛がのどかに放牧された斜面に並ぶソーラーファームの光景は、自然と共生しながら未来に向けた新しいエネルギー環境を実践するクルックフィールズの象徴のひとつ。そのふもとにはアート作品も展示されている

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場内には、さまざまな野菜を育てる畑や養鶏場、水牛やブラウンスイス牛、山羊や羊が飼育されている酪農場があります。また、こだわりのモッツァレラチーズづくりには欠かせない、希少な水牛を育てているのは本州ではここだけとのこと。
鶏の餌には近隣地域の豆腐工場から出たおからなど地域の未利用資源を使い、牛や山羊は場内の美味しい水と肥沃な地に生えた草を食べ、そのフンや落ち葉、雑草などはコンポストハウス(堆肥舎)で時間をかけて堆肥化し、畑で活用されています。そこで採れた野菜はダイニングで提供され、卵やミルクはシフォンケーキやチーズとなり、木更津の森で駆除されたイノシシとシカは場内の店舗「シャルキュトリー」(食肉加工所)でハムやソーセージとなり、食品残渣が出れば鶏の餌になったりまた堆肥化されたりと……何ひとつ無駄にすることがない持続可能な社会に向けた取り組みを行っています。
こうした複数の事業にまたがった活動をすることで実現する循環型農業、循環型酪農自体も特徴的な取り組みですが、生産と消費の場がすぐ隣り合っているところも特徴的です。

「たとえば牛乳のタンパク質は70℃以上の加熱で変性し、風味が変化しますが、当酪農場では65℃で低温殺菌しています。長距離の輸送も必要がないので、振動による劣化もなく、牛乳本来の甘みを残したままご提供できるのです。新鮮な牛乳は本当に美味しいんですよ。どこでもこうした環境を整えられるわけではありませんが、その食材本来の美味しさを味わうことで、“便利”“安い”以外の価値があることを感じていただけると思います」(小林さん)

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(写真上段)酪農場にある牛舎の様子。新鮮なミルクや各種のチーズも名物のひとつ
(写真下段)コンポストハウスで発酵中の堆肥の温度は70度を超えていた

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(写真上段)酪農場にある牛舎の様子。新鮮なミルクや各種のチーズも名物のひとつ
(写真下段)コンポストハウスで発酵中の堆肥の温度は70度を超えていた

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クルックフィールズで1日過ごしていると、自然の営みに無駄はないことがよくわかります。

「国際情勢が不安定になれば原油価格が値上がりし、輸入に頼っていた食糧や飼料が不足してしまう時代です。今後、世界の人口爆発による食糧危機も懸念されています。もし近くに竹林があり、竹を発酵させたものが肥料になって野菜が育ち、そこで落ちた野菜を鶏が食べて……と、近くにあるもので循環させて食べ物を生み出すことができる、普段実践できなくてもそういう選択肢がある、それが成り立っている例があると知っておくだけでも安心感が持てるのではないかと思います」(小林さん)

クルックフィールズでは、今年もフィールドツアーを始めとするさまざまな体験コンテンツを予定しています。 いざというときに、私たちはどうすればいいのか。そのときのために、普段からどのような暮らしをめざしていけばいいのか。クルックフィールズを訪れることで考えてみませんか。

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小林真理(こばやし・まり)
KURKKU FIELDS 広報

プロフィール

大学在学中にアメリカ・カリフォルニア州へ留学。現地でマーケットやオーガニックスーパーに触れ、新たな食の流れを学ぶ。卒業後は総合商社で7年間勤務する傍ら、2017年に「出会いと暮らし」をテーマにしたマーケット「SUORA CAFÉ」を主宰。2018年、創業メンバーとして入社。

「KURKKU FIELDS」

住所〒292-0812 千葉県木更津市矢那2503
営業時間10:00 〜 17:00
定休日火・水曜(祝日は営業)
入場料(保全料)ビジター 小学生400円、中学生以上800円
メンバー 小学生100円、中学生以上300円
メンバーシップ年会費
一般   小学生500円、中学生以上1,000円
千葉県民 小学生300円、中学生以上500円
※未就学児無料/メンバーシップ制度あり

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小林真理(こばやし・まり)
KURKKU FIELDS 広報

プロフィール

大学在学中にアメリカ・カリフォルニア州へ留学。現地でマーケットやオーガニックスーパーに触れ、新たな食の流れを学ぶ。卒業後は総合商社で7年間勤務する傍ら、2017年に「出会いと暮らし」をテーマにしたマーケット「SUORA CAFÉ」を主宰。2018年、創業メンバーとして入社。

「KURKKU FIELDS」

住所〒292-0812 千葉県木更津市矢那2503
営業時間10:00 〜 17:00
定休日火・水曜(祝日は営業)
入場料(保全料)ビジター 小学生400円、中学生以上800円
メンバー 小学生100円、中学生以上300円
メンバーシップ年会費
一般   小学生500円、中学生以上1,000円
千葉県民 小学生300円、中学生以上500円
※未就学児無料/メンバーシップ制度あり

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