音楽プロデューサーの小林武史さんが、2019年11月にオープンした「KURKKU FIELDS(クルックフィールズ)」。約9万坪の広い敷地内に、太陽光発電を備え、植物や微生物を活用した水質浄化システムがあり、農業や養鶏、酪農が営まれ、家畜の排泄物や生ごみは堆肥化するなど、環境や資源に配慮した自然共生社会をめざす取り組みがなされています。今回はそのクルックフィールズの宿泊施設「タイニーハウスビレッジ」が、快適に暮らすために行っている工夫をご紹介します
※取材写真は2022年7月時点
小さな部屋にこだわりを詰め込んだタイニーハウス
クルックフィールズでは、米国ポートランドがムーブメントの発祥とされるタイヤが付いた小さな小屋「タイニーハウス」に泊まることができます。タイニーハウスは6棟あり、それぞれ2〜4名が滞在可能。外から見ると本当に小さくてかわいらしい小屋ですが、中に入ってみると二段ベッドを活用するなどしてスペースに無駄がなく広々と過ごせます。
窓はすべて二重サッシ、壁にはしっかりと断熱材を装備しています。だから冷暖房の効率がよく、寝る前に暖房を入れると睡眠中に止めても朝までずっとあたたかいくらいです。マットレスはマニフレックス製。マットレスが厚いと圧迫感を感じてしまうため、薄いけれどもしっかりと体を支えるタイプを使い、室内を視覚的に広く見せています。
定員4名のタイニーハウス「Cattle(カトル)」は「牛飼いの家族が仕事の合間に休む場所」がコンセプト。
全6棟のタイニーハウスはすべて断熱性に優れた二重窓が採用されている
定員4名のタイニーハウス「Cattle(カトル)」は「牛飼いの家族が仕事の合間に休む場所」がコンセプト。全6棟のタイニーハウスはすべて断熱性に優れた二重窓が採用されている
「タイニーハウスのいいところは、こだわりを詰め込めるところです」と語るのは、クルックフィールズのスタッフ・新井洸真さん。
「大きい建物はこだわればこだわるほどコストがかさみますが、小さい分、細かいところにこだわってもそれほどコストはかかりません。限りある空間のため、諦めなければならない部分はあります。たとえば、ここではシャワーやトイレはセンターハウスという隣接する別棟をお使いいただくことにしています。その分、断熱や窓にこだわることで、寝室やリビングとしての居住性を追求しました。別棟をお使いいただくことで必然的に外に出るので、周囲の人との会話も生まれやすい。プライベートが守られつつ外に向かって開いているところも、このタイニーハウスのいいところです」(新井さん)
新井さんによれば、実際にタイニーハウスで生活している人たちもそういう考え方をする人が多いのだそうです。たとえば料理好きならばキッチンをとことん充実させ、その分、他の機能は簡素化させる形です。
「暮らしのスペースを小さくすると全てを詰め込むことはできず、何かを選んでいかなければなりません。その過程で、自分が本当に大切にしているものが見えてくる。タイニーハウスでしばらく暮らした後に普通の家に戻られる方もいますが、『暮らしの質が変わる』という話をよく聞きます」(新井さん)
(写真上段)定員2名の「Nipper(ニッパー)」は、「街に住む大人たちが作ったタイニーハウス」がコンセプト
(写真下段)「センターハウス」と清潔感のあるドレッシングルーム
(写真上段)定員2名の「Nipper(ニッパー)」は、「街に住む大人たちが作ったタイニーハウス」がコンセプト
(写真下段)「センターハウス」と清潔感のあるドレッシングルーム
タイニーハウスの宿泊者たちは、夕食は地域の新鮮なお肉やお魚、場内で製造したソーセージや新鮮な有機野菜などのバーベキューを楽しめます。そこで出た生ゴミは設置されたコンポストに入れると、ミミズや微生物がゆっくりと分解。ゆくゆくは畑の肥料に循環されます。
また、このしくみを家庭の庭やベランダでも活用できるコンポストバッグの開発、販売もしています。生ゴミはきちんと分解されるとイヤなニオイが発生しません。ゴミがゴミではなく、豊かな資源になるという点も生活の充足感につながります。
タイニーハウスビレッジの向かいに位置するバーベキューテラス。
調理を除く器材の準備や片付けはスタッフにお任せできて、手ぶらで楽しめる。
生ゴミを堆肥化するコンポストの中にはたくさんのミミズの姿が
タイニーハウスビレッジの向かいに位置するバーベキューテラス。
調理を除く器材の準備や片付けはスタッフにお任せできて、手ぶらで楽しめる。
生ゴミを堆肥化するコンポストの中にはたくさんのミミズの姿が
「循環のしくみはなかなかイメージしづらいかもしれませんが、クルックフィールズで過ごしていただければ少し実感を持っていただけると思います。これをそのままサイズダウンして家庭でも取り入れることは難しいかもしれませんが、たとえば電力を選ぶときに再生可能エネルギーを選ぶなど、今後の消費行動につなげていっていただければ。また、個人で実現しようとしなくても、クルックフィールズのような場やコミュニティの参加者として取り組んでいく形もいいと思います」(新井さん)
クルックフィールズでの過ごし方のエッセンスを日々の暮らしに取り入れてみると、違った世界が見えるかもしれません。
新井洸真(あらい・こうま)
KURKKU FIELDS 施設運営
プロフィール
大学で教員免許を取得後、大学院でアウトドアレジャーを専門に学ぶ。
2017年、株式会社 KURKKU入社。2018年、創業メンバーとして参画。タイニーハウスビレッジでの宿泊体験事業をはじめ、施設全体の運営を担う。
木更津の地域住民とのコミュニティ形成にも注力している。
「KURKKU FIELDS」
住所 | 〒292-0812 千葉県木更津市矢那2503 |
営業時間 | 10:00 〜 17:00 |
定休日 | 火・水曜(祝日は営業) |
入場料(保全料) | ビジター 小学生400円、中学生以上800円 メンバー 小学生100円、中学生以上300円 メンバーシップ年会費 ■一般 小学生500円、中学生以上1,000円 ■千葉県民 小学生300円、中学生以上500円 ※未就学児無料/メンバーシップ制度あり |
新井洸真(あらい・こうま)
KURKKU FIELDS 施設運営
プロフィール
大学で教員免許を取得後、大学院でアウトドアレジャーを専門に学ぶ。
2017年、株式会社 KURKKU入社。2018年、創業メンバーとして参画。タイニーハウスビレッジでの宿泊体験事業をはじめ、施設全体の運営を担う。
木更津の地域住民とのコミュニティ形成にも注力している。
「KURKKU FIELDS」
住所 | 〒292-0812 千葉県木更津市矢那2503 |
営業時間 | 10:00 〜 17:00 |
定休日 | 火・水曜(祝日は営業) |
入場料 (保全料) |
ビジター 小学生400円、 中学生以上800円 メンバー 小学生100円、 中学生以上300円 メンバーシップ年会費 ■一般 小学生500円、 中学生以上1,000円 ■千葉県民 小学生300円、 中学生以上500円 ※未就学児無料/ メンバーシップ制度あり |
タイニーハウスミニギャラリー