吹きガラス独特のなめらかな艶とデザイン性の高さが人気の「肥前びーどろ」。格調高い佐賀伝統のガラス器から、日常使いのカジュアルなガラスウェアまで幅広いアイテムに人気が集まっています。
ハンドメイドのガラス製品である肥前びーどろの何よりの魅力は「特別感」です。
研鑽を積んだ職人が、遊び心を散りばめながら1品1品に命を吹き込む吹きガラスは、1つとして同じものはありません。同じ商品でも緩やかに波打っていたり、ランダムに気泡が入っていたりと、それぞれに違う表情を持っています。
この世に1つの特別なガラス器が、食卓やお部屋の一角に涼やかで贅沢な時間を連れてきます。
肥前びーどろの工房では伝統的なスタイルの花器や酒器が作られるかたわら、常に新しいガラスウェアの創造が続けられています。5色のガラスが虹のように輝くタンブラーや、肌にやさしく光を落とすアクセサリーなど、その世界は色とりどり。
食卓やインテリアのコーディネートにも大活躍してくれます。酒器と食器、花器を色ガラスでリンクさせれば、いつもの食事がちょっと特別な時間に。また花器はもちろん、大ぶりのガラス皿や鉢にお花やグリーンを飾るのもおすすめです。
ガラス器を飾る際のポイントは、窓際や間接照明の前など背面から光が射す場所に置くこと。なめらかな曲面が光を透かし、お部屋に涼やかな陰影が生まれます。
日本におけるガラスの歴史は古く、はるか縄文時代の遺跡からガラス玉が出土されています。
西欧ガラス製品がはじめて伝わったのは1549年。ポルトガルの宣教師フランシスコ・ザビエルが遠メガネやガラスの鏡を持ち込みました。
鎖国時代にはポルトガルだけでなく、オランダやイギリスからもガラス器が伝来し「ビー ドロ」や「ギヤマン」と呼ばれ珍重されるように。1570年代にはガラス製造法も伝わり 、風鈴や徳利といったガラス細工も盛んになっていきました。
そして江戸時代末期。文明開化前夜、科学技術の発展が求められる潮流の中で肥前びーどろが誕生します。
「幕末、佐賀藩ほどモダンな藩はない。」司馬遼太郎 がある短編小説の冒頭に綴った一文です。
江戸末期、賢君・鍋島直正公のもと日本の最先端を 走った佐賀藩。理化学研究を行う「精錬方」にはガラス窯が築かれ、フラスコやビーカーなどが生産さ れました。やがてその技術は民間に継がれ、佐賀伝 統の「肥前びーどろ」へ。とろみある流線と水底のような透明感をまとったガラス器へと進化しました。
※「アームストロング砲」司馬遼太郎/講談社文庫 /1988
かんびん(左)、ちろり(右)
佐賀藩の精錬方をルーツとする重要無形文化財「肥前びーどろ」は、型を用いず、息を吹き込みながら宙空で成形する「宙吹き(ちゅうぶき)」で作られるガラス器です。
特徴的なのは宙吹き技法の一つである「ジャッパン吹き」。肥前びーどろだけに受け継がれる技法で、一般的な金属製の吹き竿ではなく、ガラス製の友竿(ともざお)と呼ばれる道具を用います。伝統の酒器「肥前かんびん」や「藍色ちろり」もこの技で吹かれる逸品です。
一人の職人が2本の友竿を操ることから“二刀流”とも呼ばれる技術は難易度が高く、習得に10〜20年もの時間を要すると言います。
そんな「ジャッパン吹き」で吹かれたガラス器は、空気以外にほとんど触れることがなく生み出されるので、とてもなめらかな肌合いと光沢をまとっています。
今回、取材にご協力いただいたのは、副島硝子工業株式会社。伝統のジャッパン吹きで作られるガラスの燗瓶や、ハンドメイドの温もりを宿すグラス類、格調高い大皿や花器、スタイリッシュなアクセサリーなど、多彩なガラス製品がリリースされています。
1つずつ丹精込めて吹き上げられる肥前びーどろは、ご自宅での普段使いはもちろん、プレゼントや内祝など贈答品としてもおすすめです。