2023/10/04

旅・レジャー

日本ワインを知る・楽しむ旅へ【前編】

豊かな自然に触れる秋旅に出かけてみませんか

すてき度

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過ごしやすい秋の行楽シーズン。日本有数のワイン産地、長野県東御市(とうみし)も、ぶどうの収穫時期を迎えてワイン造りが本格化する季節。
今回は、澄んだ空気と絶景、そして、おいしい料理とワインを楽しむ旅の提案です。皆さんも、豊かな自然に触れる秋旅に出かけてみませんか?

取材撮影/2023年6月

長野県東部から北部まで、千曲川の流れに沿って広がるぶどうの栽培地域「千曲川ワインバレー」。東御市を中心とする9市町村からなる東地区には、ヴィラデストワイナリーを含め20軒を超すワイナリーや、ワインを楽しめる観光スポットが点在しています。現地で生産者と触れ合う体験ができるのも、旅の醍醐味のひとつです。実際に産地を訪れるときには、複数のワイナリーを巡ってみるのもおすすめです。

東御市周辺MAP

施設名をクリックすると各ページに遷移します。

訪ねたのは、東御市に最初に造られたヴィラデストガーデンファームアンドワイナリー。当初から栽培醸造を担う小西超さんの案内でぶどう畑へ向かいます。
「この畑は標高850m、眼下の千曲川は標高500mにあります。標高差による昼夜の寒暖差が大きく雨が少ない上に南向きなので、日当たりも良好。もともと巨峰の栽培が盛んで、ぶどう栽培に適した土壌です。同じ畑でもさまざまな品種が育ち、土地の性質上、糖分と酸味が保持された凝縮感のあるワインが造れるのが特徴です。同じ品種でも少し場所が違うだけで、ワインの味は変わります」

代表の小西超(こにし・とおる)さん。大学院で微生物を研究し、大手酒造メーカーに勤務。そこで玉村豊男氏と出会い、ワイナリー設立時から栽培と醸造に携わる。ここはシャルドネ品種のぶどう畑で、今年は6月中旬に開花した。

「ここに来たら、景色を堪能して、信州の空気を感じて、ただただリラックスしていただきたい」と小西さん。
その言葉どおり、ぶどう畑に出ると、正面で待ち受けていたのは北穂高岳や明神岳など北アルプスの山々が織りなす絶景。次はこのワイナリーの魅力のひとつでもあるガーデンへ。ハーブや野菜、四季折々の花が出迎える庭園を散策すれば、気分はリフレッシュ。ベンチで風景を眺めていると、時のたつのを忘れます。
「時期が合えば、ぶどうの収穫体験もできますよ」

セージやローズマリーなどのハーブや野菜も栽培。

ワイナリー開業前の1991年に東御に移り住み、ぶどうを育て始めたのは、エッセイストで画家の玉村豊男さん。オーナーの玉村さんの作品は、ギャラリーで見られるほか、食器やキッチンアイテムとなって、ショップに並びます。

旅の思い出を自宅に持ち帰って楽しめるのも、オリジナル商品の魅力。

カフェの階下にあるギャラリーでは、玉村さんの絵画作品を展示・販売。

「2003年には市内でここ1軒だったワイナリーが、今では13軒に増えました」と小西さん。2015年に開講した民間講座「千曲川ワインアカデミー」では、栽培から醸造法、経営までを教え、毎年多くの卒業生を輩出しています。「ぜひ、近隣のワイナリーにも足を運んでみてください」(小西さん)

取材協力/ヴィラデストガーデンファームアンドワイナリー

「千曲川ワインアカデミー」は、ヴィラデストの兄弟ワイナリー「アルカンヴィーニュ」の施設を利用して実施されている。

取材協力/ヴィラデストガーデンファームアンドワイナリー

Information

ヴィラデストワイナリー

  • TEL:0268-63-7373(カフェ予約 0268-63-7704)
  • 住所:長野県東御市和6027
  • 営業時間:10~17時
  • 休日:カフェのみ水曜定休。12月下旬~3月上旬は冬季休業
  • 交通:北陸新幹線上田駅から車で約30分、またはしなの鉄道大屋駅から車で約10分。上信越自動車道・東部湯の丸ICから約15分

カフェやワイナリーショップ、ギャラリーのほか、醸造所も併設。休憩できる庭園もあります。

信州産のフルーツを使った濃厚なジュースの種類も豊富。

Column

注目を集める日本ワイン

北は北海道から南は九州まで、日本で作られたワインが注目を集めています。一般的に日本ワインとは、「日本国内で栽培されたぶどうを100%原料に、日本国内で醸造されたワイン」のことを指し、全国の生産地のうち半分以上は上位5県が占めています。日本は四季があり降水量も多いため、これまでは良質なワイン造りに欠かせないぶどう栽培に不利があるとされてきました。しかし近年では、生産者による土壌の改良や栽培知識・醸造技術の向上など、「適地適品種」を大切にした栽培が心がけられ、今では各地で良質なぶどうが多く収穫されています。

グラフ出典/国税庁「酒類製造業及び酒類卸売業の概況(令和5年アンケート)」をもとに作成

Column

日本ワインの歴史と山梨・北海道ワインの特徴

日本ワインの歴史は、明治時代の山梨県・勝沼町(現・甲州市勝沼町)から始まりました。それまで養蚕で栄えていたこの地域では、絹に変わる新たな産業としてワインづくりに力を入れることになり、日本の固有品種「甲州」の魅力を世界に普及させました。
また、同じく文明開化期の茨城県でもブドウ酒の製造が起こり、その後大規模な生産体制を確立しています。
現在、山梨県で多くのワイナリーが集中する勝沼地域では、日本ワインのパイオニアたちの志を受け継ぎ、良質な甲州ワインを広げるための活動が行われています。日本で初めての原産地保証、品質保証をするという自主的な取り組みにより、厳しい審査で一定以上の合格点を取得したワインは、勝沼ボトルの勝沼ワインとして販売され、高い人気を博しています。
山梨県、長野県に次ぐワイナリー数3位の北海道は、雨が少なく冷涼な気候のため、良質なピノ・ノワールやドイツ系品種の栽培が盛んに行われています。
また、厳しい生産基準が設けられたワインにおける地理的表示、GIに指定されている5つの産地のうちのひとつであり、道内のワイナリー数も23年2月時点で55箇所と、10年前の約3倍に増加。世界に通用するワイン産地の形成を目指す取り組みが続いています。

日本ワインのパイオニア、土屋龍憲と高野正誠がラベルの上にエンボスされた勝沼ボトル
「GI 北海道」には、ワインの原料となるブドウ品種と製法による生産基準が設けられている

日本ワインの歴史は、明治時代の山梨県・勝沼町(現・甲州市勝沼町)から始まりました。それまで養蚕で栄えていたこの地域では、絹に変わる新たな産業としてワインづくりに力を入れることになり、日本の固有品種「甲州」の魅力を世界に普及させました。
また、同じく文明開化期の茨城県でもブドウ酒の製造が起こり、その後大規模な生産体制を確立しています。

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現在、山梨県で多くのワイナリーが集中する勝沼地域では、日本ワインのパイオニアたちの志を受け継ぎ、良質な甲州ワインを広げるための活動が行われています。日本で初めての原産地保証、品質保証をするという自主的な取り組みにより、厳しい審査で一定以上の合格点を取得したワインは、勝沼ボトルの勝沼ワインとして販売され、高い人気を博しています。
山梨県、長野県に次ぐワイナリー数3位の北海道は、雨が少なく冷涼な気候のため、良質なピノ・ノワールやドイツ系品種の栽培が盛んに行われています。
また、厳しい生産基準が設けられたワインにおける地理的表示、GIに指定されている5つの産地のうちのひとつであり、道内のワイナリー数も23年2月時点で55箇所と、10年前の約3倍に増加。世界に通用するワイン産地の形成を目指す取り組みが続いています。

日本ワインのパイオニア、土屋龍憲と高野正誠がラベルの上にエンボスされた勝沼ボトル

「GI 北海道」には、ワインの原料となるブドウ品種と製法による生産基準が設けられている

白百合醸造(山梨県)

昭和13年創業・ロリアンワインで知られるワイナリー。ロリアン(L’ORIENT)は「東洋」を意味するフランス語。ヨーロッパに劣らぬ高水準のワイン造りを目指して名付けられた。
原料のぶどう栽培からワイン造りまで、50余年の伝統に培われた技術で常に一貫性のあるワインを追求している。

  • 住所:〒409-1315 山梨県甲州市勝沼町等々力878-2
  • TEL:0553-44-3131
  • 営業時間:9:00~16:30(無休)
  • 見学:無料(20名以上は要予約。ほか各種試飲ツアーあり)

丸藤葡萄酒工業(山梨県)

創業130周年。商標名(ブランドネーム)の「ルバイヤート」が人気の老舗ワイナリー。伝統の在来品種甲州や欧州系品種カベルネ・ソーヴィニヨン、プティヴェルド、シャルドネなどの栽培・醸造に試行錯誤を重ね、世界に誇る日本のワイン」造りを目指している。

  • 住所:〒409-1314 山梨県甲州市勝沼町藤井780
  • TEL:0553-44-0043
  • 営業時間:9:00~16:30(無休。年末年始を除く)
  • 見学:無料(試飲500円。ショップあり)

シャトー勝沼(山梨県)

勝沼を代表するワイン産地・鳥居平に位置する、勝沼最古のワイナリー。栽培から醸造、販売まで、全て一貫した手作りにこだわり、「鳥居平今村」を始めとする良質のワインで世界から称賛を受けている。併設のレストラン鳥居平では、自慢のワインとともに本格的なフレンチが楽しめる。

  • 住所:〒409-1302 山梨県甲州市勝沼町菱山4729
  • TEL:0553-44-0073
  • 営業時間:[レストラン]11:00〜20:00
  • 見学:中止中(※2023年9月時点)

NIKI Hills Winery(北海道)

北海道・仁木町で130年続く豊かな果樹園を継承し、2015年からワイン醸造を開始。現在は年間約3万本のワインを生産。33ヘクタールの広大な敷地に醸造所、ぶどう畑、ナチュラルガーデン、レストラン、宿泊施設を備え、地域創生を目指し仁木町の活性化を支える。

  • 住所:〒048-2401 北海道余市郡仁木町旭台148-1
  • TEL:0135-32-3801
  • 営業時間:[ワイナリー・ショップ]10:00〜16:00/[レストラン]ランチ11:30〜13:00
  • ディナー18:00 ※一斉スタート/不定休
  • 見学:有料(要予約)

監修/日本ワイン.jp

「日本ワイン. jp」

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