プロに聞く 大規模修繕のツボ
工事施工会社を選定・決定するには

 前回の本誌50号では実際の大規模修繕工事計画の作成・設計の方法や手順をご説明しました。今回はこれらをもとに具体的に工事を進めていくにあたり、工事の成否のカギを握る工事会社の選定方法についてご説明します。

工事会社選定の3つの方法

 工事会社の選定は、設計監理方式の場合はコンサルタントの補助により修繕委員会(修繕委員会がない場合は理事会)が行います。一方、管理組合自主方式の場合は修繕委員会単独で行います。いずれの場合も大きく分けて次の三つの選定方法があります。

○特命方式
 修繕委員会が管理会社やコンサルタントなどの意見を参考に、工事会社の施工能力・技術力などを調査して特定の一社に発注する方法で、工事価格が適正であるかどうかの判断が難しい方式です。
○競争入札方式
 入札を基本とし公開の場で開封していちばん価格の低いところに決める方式です。コスト重視の方法ですが、安かろう悪かろうという場合もあるので注意が必要です。
○見積合わせ方式
 もっとも一般的に行われている方式です。あらかじめ選定した複数の会社に見積を依頼し、技術力や工事価格などを総合的に判断して工事会社を決める方式です。

見積合わせ方式の手順

STEP 1 見積参加会社を募集

 会社の所在地や規模、特定建設業の許可、大規模修繕工事の実績、工事現場責任者(現場所長)の要件などを設定し、その範囲内で工事会社を募集します。募集条件に合っていることを証明する書類の提出を求めます。

《Point》
募集条件は、大規模修繕工事を安心して任せられる会社を選ぶ為に設定します。マンションの立地や工事の規模(金額)、工事内容などに応じて管理会社やコンサルタントなどと相談して決めましょう。万が一の施工業者の倒産による工事中断等の影響を最小限にする為、工事の履行保証などを条件にすることもあります。

STEP 2 一次選考(書類)

 応募してきた会社が多い場合、書類選考により見積を依頼する会社の数を絞り込みます。

《Point》
あまり多くの会社に見積を依頼すると選考が大変です。大型マンションでは七〜八社、中・小規模のマンションでは五社ぐらいが一般的です。

STEP 3 見積を依頼

 一次選考を通過した会社に対し、見積を依頼します。見積依頼をする会社には、見積要領書をはじめ、仕様書・見積内訳明細書など見積に必要な設計図書を渡します。

《Point》
見積にあたり、設計図書だけでは判断ができないものもある為、マンションを実際に見てもらい、質疑の機会を設けます。質疑に対する回答は見積参加全社に送ります。

STEP 4 二次選考

 見積が出そろったら、各社の比較表を作成し、二次選考をします。比較表には工事費の他、書類選考の内容や独自に調査した内容を盛り込んで比較します。

《Point》
三社から五社程度に絞り込むのが一般的です。見積の比較では、総額だけでなく、工事項目毎の比較分析も行い、設計価格や他社との見積に対し、異常に高額や低額の項目があった場合、その原因を確認します。

STEP 5 最終選考(ヒアリング)

 二次選考で残った工事会社に対し、面談による選考を行います。これをヒアリングと呼ぶこともあります。各社のアピールをしてもらったり、管理組合側から質問をすることにより、各社の工事に対する取り組み姿勢や居住者への配慮のしかた、技術力などを把握します。工事価格だけでなく、ヒアリング結果と二次選考の結果を基に最終候補を一社に絞り込みます。

《Point》
住まいながらの工事の為、工事現場責任者(現場所長)予定の社員も出席させ、やる気や人柄、工事管理能力などを知ることや、グレードアップや質を落とさずコストを下げる提案などの有無・内容も選考における大きなポイントです。またヒアリングには修繕委員や理事以外の一般区分所有者にも参加してもらうと合意形成にも良い効果が得られます。
なお、各段階の選考で外れた会社には、不採用通知を送りましょう。

STEP 6 価格交渉

 必ずしも最終選考で残った会社が最も低い工事価格だとは限りません。最終の価格交渉をします。
 これで工事会社と工事価格、工事内容が決まります。(内定)

STEP 7 総会決議

 選考結果、工事価格、工事内容などを総会にかけて承認を得ます。

 

 ※次号はいよいよ具体的な工事に入ります。

 

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