プロに聞く 大規模修繕のツボ
大規模修繕工事の着工から完工まで〈後編〉外壁塗装工事〜工事竣工後

 シリーズでお伝えしてきました「大規模修繕のツボ」も今回で最終回。いよいよ工事も完了です。ここでは前回(53号)の工事工程フローの後半部分と竣工後についてご説明いたします。

6. 外壁塗装工事

 外壁塗装工事の目的は、美観を保つだけでなくコンクリートを保護することにあります。塗装することで外壁表面からの水や炭酸ガス、塩化物イオンなどのコンクリートを劣化させる物質の侵入を防ぎます。

 基本的な工法としては、現状の塗装の上に新しい塗料を塗ります。まず塗装前に他の部分を汚さないように、透明なシートや養生テープなどでマスキングをします。養生が完了したら、ローラーまたは刷毛で塗料を塗ります。住みながらの工事であるマンションの大規模修繕工事では、塗料の飛散をできるだけ防ぐため、特別な事情がない限り吹付による塗装は行わないのが一般的です。

 仕上げの色も、設計段階では決めていないのが一般的です。色は小さな見本で見ている場合と実際に広い面積で見た場合とでは印象が大きく変わる場合が多く、選定には注意が必要です。また青、緑、黄色、赤などの原色系は色褪せしやすいので耐久性の高い塗料を使います。ワンポイントで色を変える、ラインを入れるなどは建物のイメージアップに有効です。

《Point》
 一般的な塗り見本と違って、現状の塗装の上に塗料を塗る場合、塗装仕様によっては塗装面の模様がこれまでと大きく変わったり、塗装下地である現状の塗装の模様が現れてくる場合があります。予め試験施工を行い、仕上がり具合を確認するとよいでしょう。

7. 鉄部等塗装工事

 メーターボックスの扉等の金属部分や、パーティションボードや樹脂等の外壁以外の非金属部分の塗装を行います。鉄に代表される金属はいずれも錆びる性質があるため、水や酸素の浸入を防ぐため、ピンホールのない充分な膜厚の塗装が必要です。塗装の前に、劣化した塗膜とサビをしっかり落とします。この下地処理により耐久性が大きく左右されます。

《Point》
 鉄部は建物に固定したままで塗装するのが一般的ですが、サビ落としや塗装が充分にできないこともあります。一旦分解してサビ落としや塗装のできるものもありますが、分解と復旧のためにそれなりの費用が発生します。また、サビ落としの工法によっても費用が大きく異なりますし、マンションでは使えない工法もあります。事前にどんな仕様になっているかを確認しておくとトラブルが減らせるでしょう。

8. 防水工事

 防水工事はお部屋の中などに水が入らないようにするために行います。主な工事箇所は屋根(屋上)、ベランダ、ルーフバルコニー、廊下などです。

 平らな屋根(陸屋根)の場合、アスファルト防水(❶)が多く用いられます。新築時は屋上に設置した窯でアスファルトを溶かしたものを使って、アスファルト防水シートを積層し防水層を作るのですが、改修工事では、冷工法やトーチ工法といった火を使わないか、バーナーで炙る程度でアスファルト防水シートを既存の防水層の上に敷き重ねていく工法が多く採用されています。また最近ではアスファルト防水シートの代わりに、塩ビシートを用いる塩ビシート防水(❷)も増えてきました。

 一方、複雑な形状の屋根や庇、狭くて入り組んだところにはシートを貼りにくいので、塗るだけで防水層を作ることのできるウレタン系の塗膜防水(❸)が用いられます。工法による得手不得手やライフサイクルコストを考慮して防水工法を選定します。

《Point》
 現在漏水していなくても、一旦漏水すると部屋や家具などの仕上げを毀損することになるため、漏水してから改修するのではなく、漏水する前に改修することが肝要です。また、防水仕様によっては、トップコートの塗り替えが必要な場合もあります。今後の維持をどうやっていくかも確認しておく方がよいでしょう。

9. 足場解体

【足場解体前検査】
 修繕工事がひととおり終了した時点で、足場がなければ点検できない箇所に未施工部分や不具合等がないか、管理組合による検査を行います。

【足場解体】
 不具合があれば手直しを行い、手直し完了後に足場の解体作業に入ります。通常はバルコニー側を先に解体します。

【お願い】
足場解体は組み立て以上に危険な作業ですから、近づかないように注意しましょう。資材の搬出などで車の出入りもありますから誘導員の指示に従ってください。

10. 共通仮設解体

 竣工検査とその手直しを行い、現場事務所等の共通仮設物を解体・撤去し、竣工図書を引き渡して工事は竣工となります。

【工事竣工後】
 竣工後は、工事会社が1年、2年、5年目の点検を行うことがあります。点検で不具合が見つかった場合、それが工事保証条件の対象・範囲であれば補修を行い、そうでないものは補修費用の見積もりを提出します。

 

 

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