2021.02.10
キッチン
ヒストリー
キッチンの歴史と暮らしの変化
お料理したり、家族とわいわい楽しんだり、時にはひとりでほっとくつろいだり、趣味や仕事をするコーナーがあったり。今やキッチンは、いろいろな役割をもつ多目的スペースとして住まいの中心的な存在となっています。でも今から60~70年前頃には、単に調理という家事をこなすだけの簡素な場所でした。そこから今日のスタイリッシュなキッチンへとどう変わってきたのでしょうか。
現在のようなキッチンスタイルの原型は、昭和30年代(1950年代)に誕生した公団住宅といわれています。それまでは家の北側の日の差さないところに居室から少し離れた動線でひっそりと設けられていた「台所」。それが団地の登場ではじめて居室の一角に「台所」が配置され、「台所兼食堂」の考え方も取り入れられるようになりました。ダイニングテーブルが置かれた居室は食事専用スペースとなり、食事後にちゃぶ台を片付けて、寝室に使うという当時の生活習慣からの決別は画期的でした。
蓮根団地(東京都)1957年(昭和32)竣工
当時のコンロはガス七輪
画像提供:UR都市機構
こうして生まれたダイニングキッチンは、時代とともに家族のコミュニケーションの場や、おもてなしのスペースとしての役割を大きく広げていきました。また女性の社会進出やライフスタイルの変化に合わせて、機能性や先進性、収納力、省エネ性能など求められるニーズの高まりに応じて、今日のような見た目も美しく、使い勝手に優れたシステムキッチンの登場へとつながっていきました。
パネルに温度や湯量をセットしておくだけで、いつでも水栓からお湯が出てくる現代の給湯器。しかし公団住宅が誕生した頃のキッチンに給湯設備は見あたりません。四角い小型の湯沸器が広く使われるようになったのは、その後の1965年頃のことでした。
設置された湯沸器を操作することで、いつでもお湯が使える便利さは、まさにキッチンの快適さを確実にステップアップしてくれるものでした。
【小型湯沸器】KG-A4号湯沸器 1965年(昭和40)
※普及した角型小型ガス湯沸器の一例として
画像提供:東京ガス ガスミュージアム
その後1970年代には、屋外設置型でお風呂とキッチンを同時にまかなう給湯器が登場。さらに1980年~1990年にかけて、今では標準的な仕様である、お湯の温度や量を自動に調節できる「自動化」機能がキーポイントに。またSDGsが注目される現代では、ガス、電気どちらにしてもより燃料の使用を抑える省エネ性や環境保護(エコ)という目的を果たしながら熱効率をアップすることなどが求められています。
明治時代から利用されてきた鋳物製のガス七輪。昭和30年代に入り乾電池を使用した自動点火コンロが広く普及しました。
【2口コンロ】ゼネラル二口七輪 1959年(昭和34)
※自動点火コンロの一例として
画像提供:東京ガス ガスミュージアム
その後、一方のコンロを切替えることでグリルが利用できるグリル兼用コンロも登場するなど、暮らしの変化に合わせ様々な機能を備えたガスコンロが各メーカーから発売されました。
【2口コンロ】RN-004グリル付コンロ 1972年(昭和47)
※グリル兼用コンロの一例として
画像提供:東京ガス ガスミュージアム
1974年になるとIHクッキングヒーターが登場。これまでガスコンロによる加熱調理が主流だったキッチンに、大きな変化をもたらしました。大きな特長はまず電気を使うことで、火による加熱ではなく、鍋自体を発熱させることによる調理であること。火を使わないため、安全性に優れているなどメリットもありますが、何より大きなポイントは、ガスと電気どちらの機能を選べるのか選択肢が増えたことといえるでしょう。
調理で出るニオイや煙を排出するために欠かせない換気設備。一般住戸で換気扇が使われるようになり、集合住宅の建設にともない少しずつ採用が増えていきました。この換気扇は現在でも見かけることのある、直接壁に取り付けられたプロペラのようなファンが回り、煙などを戸外に逃すものです。その後、レンジフードが登場。レンジフードはファンに加えて排出したい空気を効率的に集めるフードや気流を導くダクト(排気管)が付いたもので、直接外壁に面していなくとも設置できることは大きなメリットでした。
レンジフードは、ブーツ型(深型)の他にスリム型(薄型)、フラット型(浅型)の3タイプがありますが、独立型や対面式、アイランドタイプなどキッチンのレイアウトや雰囲気によって適したものを選ぶことができます。また最新のものは、コンロの点火・消火と連動して自動的にレンジフードが作動する機能や、高い排気能力を活かして、排気量とバランスのとれた給気を行う同時給気機能、快適な室温を保つ熱交換器機能などレンジフードの性能がさらに進化してきています。
昭和50年代日本にデビューしたシステムキッチン。それまでのセパレートキッチンに比べ、流し台・コンロ・調理台・キッチン収納などが天板(ワークトップ)でつながり一体化しています。表面に継ぎ目がなくフラットで、機能性や見た目の美しさが大きくアップしました。その後システムキッチンは性能や使い勝手を追求し進化しましたが、収納性という意味でも変化がありました。
かつては扉の中にものを収納する「開き扉」タイプが一般的でした。この場合、奥行きが深いと奥のものを取り出しにくい、高さを活用できないといった問題点がありました。しかし現在のスライド(引き出し)タイプなら、奥や上部にデッドスペースをつくることなく、収納したものはひと目で見わたせて、ものを取り出すときの動作も軽減。キッチンが使いやすいと家事がぐんぐんはかどって、気分も上がるという幸せ効果もありそうです。
キッチンは、昔も今も私たちの暮らしの中でとても関わりの深いスペースです。だからこそ使いやすさや快適さ、居心地の良さにはこだわりたいもの。愛着のあるキッチンとこれからも長くおつきあいするために、インテリアや設備機器のアップデートを考えてみるのもいいでしょう。
画像提供:長谷工マンションミュージアム
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