約1万2000冊の本を自由に読めるブックホテル「箱根本箱」や、東京・六本木と福岡・天神にある入場料制の書店「文喫」のプランニングを手掛けたのが、出版取次会社の日本出版販売株式会社の新会社である「株式会社ひらく」。そのプランニングディレクターの染谷拓郎さんが考える、暮らしを豊かにする読書とはどのようなものなのでしょうか。
――本に関わる仕事をされている染谷さんにとって、読書の楽しみとはなんでしょうか。
前提として、読書が崇められすぎているように感じています。趣味としての読書と、教育として必要な読書がごっちゃになっているように思うんです。かつては、知識を広く届けるためには本という形がいちばん効率的でした。しかし、今はタブレットで授業を受けることも当たり前になってきています。紙の本=偉いものという認識は、あと10年、20年もすれば変わっていくでしょう。 僕自身は、嗜好品として本が大好きです。理由は、まず時間の使い方が隙間時間にできるSNSなどのように細切れではなく、ある程度のかたまりを必要とするところ。時間が細切れだと思考も分散してしまうように感じるのですが、本は30分や1時間、まとまった時間でじっくりと没入することができます。さらに、本は体系的な学びや好奇心がつながっていくところも楽しみのひとつです。
――本に関わる仕事をされている染谷さんにとって、読書の楽しみとはなんでしょうか。
前提として、読書が崇められすぎているように感じています。趣味としての読書と、教育として必要な読書がごっちゃになっているように思うんです。かつては、知識を広く届けるためには本という形がいちばん効率的でした。しかし、今はタブレットで授業を受けることも当たり前になってきています。紙の本=偉いものという認識は、あと10年、20年もすれば変わっていくでしょう。 僕自身は、嗜好品として本が大好きです。理由は、まず時間の使い方が隙間時間にできるSNSなどのように細切れではなく、ある程度のかたまりを必要とするところ。時間が細切れだと思考も分散してしまうように感じるのですが、本は30分や1時間、まとまった時間でじっくりと没入することができます。さらに、本は体系的な学びや好奇心がつながっていくところも楽しみのひとつです。
――ふだんの生活を豊かにするためにおすすめの本はありますか。
何を豊かと思うかは人それぞれではありますが、僕自身が最近改めて読み直して面白いなと思ったのは、生物学者・福岡伸一さんの「新版 動的平衡 生命はなぜそこに宿るのか」(小学館新書)です。もともとは2009年に出版された本で、さまざまな側面から体の成り立ちを解説しています。体の細胞はどんどん入れ替わっているのに、入れ替わりながらも人間は自分を保っている。すなわち動的な平衡状態を保っている。豊かさは自分の外側にあるように思いがちですが、自分の内側に目を向けてみるのもおもしろいなと思いました。こうした学者の研究結果を1000円以内の新書で手軽に読めることはすごいことだと思います。
まとまった時間をかけてじっくりと没入でき、新たな学びや興味関心につなげられるのも読書の楽しみのひとつ
(※写真はイメージ)
――確かに、1000円以内で長年の研究結果を知ったり、新しい世界に出会えたりして人生が変わるかもしれない。本はコストパフォーマンスがいいですよね。
そう思います。しかし、その一方で「本は高い」という人もいます。居酒屋で500〜600円のビールは躊躇せずどんどん飲めるのに、同じ価格でも本はなぜ高いと感じてしまうのか。よく言われるのは、本は遅効性のメディアということ。飲んだらすぐ気持ちよくなれるビールと違って、本は読んでもすぐに何かに役立つものではないことが多い。熱しにくく冷めにくい。瞬間的に切り出した「コスパ」ではなく、長いスパンで見たときのコスパがいいものだと思うんです。
「本のある暮らし」を提案する、ブックホテル「箱根本箱」
――そうですね。ただその「コスパ」の感覚もコロナ禍で見直されてきているように思います。
2020年に初めて緊急事態宣言が出て外出しづらくなり多くの娯楽がストップしたときに、本屋さんの売り上げが上がったんです。出版社や本屋さん、僕らがどうにかして本を読んでもらいたいと長年手を尽くしてきたのに、コロナ禍では何もしなくても本が売れた。ということは、結局みんな忙しすぎただけなのかもしれない。もっと時間さえあれば、本が手に取られるのかもしれません。
「本のある暮らし」を提案する、ブックホテル「箱根本箱」
――そうですね。ただその「コスパ」の感覚もコロナ禍で見直されてきているように思います。
2020年に初めて緊急事態宣言が出て外出しづらくなり多くの娯楽がストップしたときに、本屋さんの売り上げが上がったんです。出版社や本屋さん、僕らがどうにかして本を読んでもらいたいと長年手を尽くしてきたのに、コロナ禍では何もしなくても本が売れた。ということは、結局みんな忙しすぎただけなのかもしれない。もっと時間さえあれば、本が手に取られるのかもしれません。
――あのときは多くの人が娯楽を求めていました。染谷さんにとっても読書は趣味の範疇を超えて、生きる糧となっているのではないでしょうか。
イコールだと思っています。趣味によって日々を生き生きと過ごせるのであれば、それは趣味であると同時に、食事のように生きるために必要不可欠なものなのではないかと思っています。今、キーワードにしているのは「モチベーションインフラ」。「何かを学びたい」という知的好奇心は電気・ガス・水道と並列だと考え、図書館や公民館など行政だけではカバーできない部分を民間企業として提供していきたい。「なくても生きていけるもの」から「なくてはならないもの」にしたいと考えています。
東京と福岡に店舗を構え約3万冊の書籍を販売する入場料制の書店「文喫」。店内の本は時間を気にせず自由に読むことができる(写真は東京・六本木店)
■プレゼント内容■
「すてきテラス」のリニューアルを記念して、ブックホテル「箱根本箱」の宿泊券
(露天風呂付客室 1泊2食付き 2名様)を1名様にプレゼント!
プレゼントの受付は終了いたしました。
ご応募いただき、誠にありがとうございました。
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