リーズナブルでおいしく、ボリュームたっぷりのメニューを提供してくれる、昔ながらの庶民的な中華屋さん「町中華」がブームとなっています。前編に続き、今回も食通で知られる音楽ユニット・ホフディランの小宮山雄飛さんに、全国でおすすめの町中華を教えてもらいました。
――国内の町中華探訪を続けていらっしゃるそうですが、関東と関西で、町中華の味に違いを感じることはありましたか。
仕事で地方に行った際には、町中華に寄ることもよくあるそうです
小宮山雄飛(以下、小宮山) 正直なところ、それほど大きな違いはないと思いますが、明確に違いを感じられるのは京都ですね。京都は伝統的な食文化を守ろうという意識が特に強いのか、町中華でも和風の出汁のとり方をしているのか、ちょっとあっさりした味の店が多く、独自のおいしさがある印象です。また、神戸もちょっと違うかな。京都とは反対に、神戸は貿易港で中華街もあります。そのせいか、町中華も本格的な中華料理の味付けが多いようです。
――微妙な味の違いでも地域性があるのは興味深いですね。全国でおすすめのお店もお聞きしたいです。
小宮山 南から行くと、福岡の「餃子 李」は、冷凍でお取り寄せもできる餃子が名物です。定食も種類が豊富ですよ。姫路の「英洋軒」も餃子が有名ですが、唐揚げも推したい逸品です。神戸の「餃子屋 満園」はスティック春巻という細長い春巻がビールに合うんです。大阪の「純華楼」では、モチモチの餃子と辛くてクセになる麻婆豆腐を食べてほしいですね。
町中華の料理をつまみながらビール。仕事のあとのホッとするひととき
――さっと紹介されただけでもおいしそう! 続いて東日本の名店を挙げるなら?
小宮山 下北沢の「珉亭」はミュージシャンも御用達。「ラーチャン」という半ラーメンと半チャーハンのセットが有名ですね。荻窪の「中華屋 啓ちゃん」は木耳玉子定食がおいしい。仙台の「藤や」は、看板やのれんには「だんご」と書いてありますが、だんごやおしるこのほかに、ラーメンやカレーも出す一風変わった食堂です。僕は通年で提供しているこのお店の冷やし中華が、日本一好きなんです。
――素人はお店の外観だけでは判断しづらいので、「旨い店」の見分け方があれば、ぜひお聞きしたいです。
小宮山 言葉で伝えられるかは微妙ですが、なんとなく共通しているのは、「ほどよい感じ」です。年季が入りすぎていると入りづらいのですが、とはいえ新しすぎるのもちょっと違う。歴史あるお店でも、改装して新しくなっちゃうと、ちょっと寂しさを感じます。
ひとりでもふらりと気軽に入れるのが町中華の魅力
――「古い」というのは、それだけ地元で長く愛されてきた証でしょうか。
小宮山 そうですね。お店を新しくすることはできても、古くすることはできませんから。とても重要なポイントといえますね。
――「お店の中ではこうするべき」など、町中華のお作法はありますか。
小宮山 慣れていないうちは、「ちょっと入りづらい」と思うかもしれませんが、もともと気軽に過ごせるお店ですし、勇気を出して、のれんをくぐってみるといいですよ。おいしい料理が待っているはずです。
「町中華の味は安心感がありますよね」と熱く語る小宮山さん
――最後に、怖そうな店主がいて困った、といったエピソードがあれば、その対処法もぜひ教えてください。
小宮山 僕はこれまで町中華で困った経験は一度もないですよ。最近流行りのラーメン屋さんのように、独自のルールを設けているようなお店はありませんから。誰でも分かりやすいように、壁に短冊メニューが貼ってあることが多いので、何をどう注文すればよいか戸惑うこともないでしょう。お店に入っても焦らずに、自分の好きなものを好きなように頼んで、穏やかなひとときを堪能してみてください。
萬来軒の料理を味わいながら、町中華について存分に語っていただきました