マンションの資産価値を考える
「安全な暮らしを実現する〜敷地内スロープ設置工事〜」
前号(60号)「マンション管理組合の取組み」でご紹介したエスペローマ高の原団地。管理組合の皆さまは安心して暮らせる環境や資産価値の向上に高い関心をお持ちです。ご高齢の居住者のためのスロープ設置や交通安全を目的とした動線整理など、昨年実施された共用部改修工事についてご紹介します。
安全・便利な通路作り
きっかけは「子どもや歩行者が多い場所(通称:真中広場)をバイクや自転車が通るのは危ない」という居住者の声でした。バイク・自転車が公道へでるための新しい通路確保のため、今回、敷地内の2カ所(①④)をスロープに改修する大掛かりな工事を実施しました。さらに、駐車場をバイク・自転車が安全に通れるよう、新しい専用通路として地面を蛍光緑色に塗装し、カーブミラーやパトランプを設置しました(⑤)。
また、本改修とあわせて、かねてから車椅子利用や消防訓練でストレッチャーを運ぶ際障害になっていた、敷地内の小さな段差を解消するための、スロープ設置工事を行いました(②③)。元々は一部の方の要望でしたが、「近い将来自分自身や家族にとって必要になるかもしれない」と考える居住者の理解により実現しました。
着工までの流れと工夫
「今回の工事ではバイクや自転車をはじめ人の流れが変わるなど利害が生じるため、慎重な対応をとる必要がありました」と理事長の岩本さん。図面の一部ができた時点で掲示し、住民に改修実施の有無を問うアンケートを行いました。アンケートに記載された疑問への返答を掲示した後に説明会を行うなど、居住者の合意形成に努めた結果、総会で無事可決され、2014年11月に工事に着手しました。
円滑な運営のコツ
同マンションでは半年で今期の12の事業計画のうち、10はクリアしたといいます。スムーズに進める秘訣を岩本さんにお聞きすると、「改修工事に限らず、居住者に事前にアンケートをとることです」と即答されました。「事前に意見や疑問を把握しておけば、明確な回答を用意しておくことができます。反対意見は情報不足から来る不安で生じるケースが多いと思うので、納得してもらえる返答を用意して、皆さんの理解を促すよう努めています。また理事同士の意思統一も事前に図っておくとよいと思います。ただ、理事会は居住者の要望を聞いて中立の立場で運営することが基本なので、反対多数ならそれに従うまでです」。
すべてのアンケートに目を通し、ひとつずつ真摯に答えていくには時間と労力が必要ですが、リーダーシップをとる人がいることで、様々なことがスピーディーに実行できます。
また、「ライフマネージャーとの連携も大切です」と岩本さん。「改修により、駐車が不便になる居住者に対し、藤井ライフマネージャーは『改修後のスペースはこうなります』と具体的なイメージを事前に提示し、実地で車庫入れの練習をしてもらうなど、尽力してくださいました。また、工事中の駐車位置調整や、完成後の安全確保など、細部まで気を配っていただきました」。
改修工事の結果、車椅子で外に出る度に段差に板を渡して通行していた世帯から感謝されたのをはじめ、バイクや自転車の利用者は利便性が増し、歩行者の安全も確保されたことで居住者皆さんに喜んでいただいているとのことでした。
フロント担当者より
「居住者のライフスタイルや考え方は様々ですので、共用部改修の実施について、すべての方の賛同を得るのは難しいものです。管理会社として、私どもは、個々に生じる影響に対し、管理組合様とともに向き合い、問題解決のための技術的・法的サポートをさせていただいております。岩本理事長が実践されているような、マンション全体と個人、それぞれの利害の両立と調和の積み重ねが将来の資産価値向上に結び付くと考えます。」