マンションの資産価値を考える
「時代に即した環境づくり、コスト削減など
 将来を見据えた大規模修繕工事を実現」

効果的な工事の実現に向け
じっくりと時間をかけて検討

 横浜市郊外のゆるやかな丘陵地に立つ「アリスガーデン横浜」。緑豊かな中庭や共用施設を囲む5階建て全7棟251戸の低層マンションです。このほど2016年1月18日から9月30日の約8カ月間に及ぶ1回目の大規模修繕工事を無事終了。実現に尽力された元修繕委員長の大村さんにお話をお伺いしました。
 修繕工事の検討に入ったのは2012年。工事着工までの過程で2度の修繕委員会を立ち上げ、修繕内容から工法、事業者の選定や予算等じっくり時間をかけて検討しました。「当マンションは敷地面積が広くて緑も多く、低層の複数棟で構成された落ち着いた環境が特長です。こうした資産価値を永く維持するためにも、我々があくまでも納得のいく形での修繕工事の実現を目指しました。そのため修繕委員会は2期にわたりましたが、充分な検討を重ねたことで満足度の高い結果が得られたと考えています」と大村さん。

躯体・外壁から各戸バルコニーまで
居住棟を中心に工事を実施

 工事施工事業者は公募に応じた10数社から数社に絞り、見積もり金額の妥当性や工法などを評価基準として最終的な選定をしました。修繕実施内容は、ひび割れやタイルの補修などの「躯体補修工事」、一般外壁や手すり壁、天井等の「外壁塗装工事」、屋上と各戸バルコニーの「防水工事」、玄関枠や共用部扉、消火栓BOX等の「鉄部塗装工事」など居住棟を中心に実施した他、駐輪場の区画整備、駐輪場段差解消、エントランス内改修、共用棟(コミュニティホール)内装工事等を実施しました。なかでも今回の注目点のひとつは屋上の防水工事です。屋上は日光・風雨などの自然の影響を最も受けやすく、劣化箇所から躯体や住戸への漏水被害も発生するため、防水対策が重要なポイントとなります。

施工後のランニングコストも
考慮して防水工法を選択

 屋上防水とは、屋上から住戸への漏水を防ぐための工事で、一般的にアスファルト防水がよく用いられています。アスファルト防水とは、施工面にアスファルトの保護層をつくることで水の浸入を防ぐものです。シート状のアスファルトを溶かしながら貼り重ねていくもので、一定の施工技術を要する工法です。
 一方、当マンションで採用したのは、DNシートと呼ばれる塩ビシートを利用した防水工法(DN防水)です。最大の特長は柔軟性のあるシートで施工面全体をすっぽり覆い被すことによる防水性能の向上です。立ち上がりから笠木まで継ぎ目なく、一体化した防水層を形成することで漏水のリスクを大きく低減。既存の防水層を撤去することなく、その上から施工できるので廃棄物処理を軽減でき、工期も短縮できます。

 また、アスファルト防水の施工後の保証期間が10年とすると、DN防水の場合は15年と約1・5倍となり、次の修繕工事時期を5年間延長できます。加えて保証期間中は、アスファルト防水では5年ごとに防水層へのメンテナンス(保護塗装)が必要になりますが、今回の工法では不要で施工後の修繕費用削減につながります。
 大村さんも「初期段階ではコストはやや割高ですが、長い目で見ればランニングコストの低減になり、居住者の利益につながります。また当マンションは低層で7棟あり屋上の総面積が広いため、定期的なメンテナンスなどの手間が少ないDN防水はベストな選択だったと考えています」。

今後はマンションの成熟度と
防災対策をテーマに

 今回の大規模修繕工事の実施に際しては、総会でのていねいな対応と2回の住民説明会を経て居住者の総意を得ており、工事完了後は「おかげさまできれいになりました」という感謝の言葉が多く寄せられたということです。
 現在当マンションでは15年前の竣工当時、約120名もいた小学生以下の子どもたちが現在は3分の1の40名に。逆にシニア会メンバーは増えて現在55名に。そこで今回の大規模修繕では、竣工時から2年間キッズルーム(託児所)として使われていた共用棟「コミュニティホール」の内装を子ども向けから一般的な仕様に改装。低めの流し台を高くしたり、館内のバリアフリー化等も進めました。「これからは世代やライフスタイルの変化に合わせ、居住者のより暮らしやすい環境づくりを定期的なメンテナンス等で実現することが大切だと考えています」と大村さん。さらに将来に向け、今後は防災対策の観点から設備機器の耐震性への配慮、被災後の一時的な避難生活への備えなどが必要になるのではないかとのお考えをお聞かせくださいました。

 

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