「大人のための文化の牙城」として2011年に開業した代官山 蔦屋書店。代官山という場所柄、学生も社会人もファミリーも海外の方も多く訪れ、多様な品揃えとなっています。2021年12月には、3号館2階フロアを「SHARE LOUNGE」にリニューアル。新しいカルチャーの発信地として日々進化しています。そんな同店で、キッズコンシェルジュを務める瀬野尾真紀さんに、おススメの絵本をご紹介いただきました。
1冊の絵本との出会いで思いが決まった
――瀬野尾さんはキッズコンシェルジュとして児童書を統括していらっしゃいますが、もともと絵本がお好きだったのでしょうか。
いえ、実は興味はなかったんです。本屋さんで働きたいと思って受付担当で入社し、2013年に児童書担当になりました。その時点では、我が子に読んであげた経験はあるものの定番の絵本ばかりでしたし、「絵本は子どものもの」と思っていました。担当になったので勉強しようと、当店のおススメとして紹介されていた『ゆうかんなアイリーン』を読んでみたら、これがすごかった。なんて言うんだろう⋯⋯、全然違う世界に連れていってくれるというか、読み終わったら映画を1本見終わったような満足感があって、絵本というものはこんなに豊かで面白いものなんだということを教えてもらいました。コンシェルジュになったのはその2〜3年後です。
1冊の絵本との出会いで思いが決まった
――瀬野尾さんはキッズコンシェルジュとして児童書を統括していらっしゃいますが、もともと絵本がお好きだったのでしょうか。
いえ、実は興味はなかったんです。本屋さんで働きたいと思って受付担当で入社し、2013年に児童書担当になりました。その時点では、我が子に読んであげた経験はあるものの定番の絵本ばかりでしたし、「絵本は子どものもの」と思っていました。担当になったので勉強しようと、当店のおススメとして紹介されていた『ゆうかんなアイリーン』を読んでみたら、これがすごかった。なんて言うんだろう⋯⋯、全然違う世界に連れていってくれるというか、読み終わったら映画を1本見終わったような満足感があって、絵本というものはこんなに豊かで面白いものなんだということを教えてもらいました。コンシェルジュになったのはその2〜3年後です。
――そうなんですね! 絵本を扱われるなかで、心がけていることはありますか。
おもに子どもが読むものなので、読んだ後に「もっと本が読みたい」と思ってほしい。だから読後感を大切にしています。たとえ悲しい物語であっても、何かしら希望や温かみがあって「本っていいな」と思ってもらえたら。そして次の本へ進んでいくお子さんが1人でも増えたら⋯⋯という気持ちです。
――売り場作りのこだわりはありますか。
絵本を始め装画や広告などでも空想の世界をアーティスティックに表現する作家、junaida(ジュナイダ)の特設コーナー。
フィギュアが並ぶディスプレイも楽しい、恐竜がテーマの絵本が紹介されているコーナー。
(写真左)絵本を始め装画や広告などでも空想の世界をアーティスティックに表現する作家、junaida(ジュナイダ)の特設コーナー。(写真右)フィギュアが並ぶディスプレイも楽しい、恐竜がテーマの絵本が紹介されているコーナー。
1カ月ごとに作家さんやテーマなど切り口を変えてコーナーを作っています。近隣の方だけではなく、場所柄お洒落をしていらっしゃるお客様も多いので、華やかな気持ちに沿えるよう雑貨もこだわって置いています。
プレゼント選び、子ども向け・大人向け、それぞれのコツは?
――絵本をプレゼントにする場合の、選び方のコツを教えてください。
「絵本と心地よく出会える空間を大切にしています。ぜひお気軽にお声がけください」(瀬野尾さん)
洋書の絵本も充実
(写真左)「絵本と心地よく出会える空間を大切にしています。ぜひお気軽にお声がけください」(瀬野尾さん)(写真右)洋書の絵本も充実
お子様のお誕生日や出産祝いに贈られたいという場合は、すでにお持ちの本をお聞きするようにしています。何を持っているかわからない場合は、かぶりにくい洋書をおすすめすることが多いですね。代官山店では洋書の絵本を数多く揃えています。特に赤ちゃん向けのものに関しては、洋書でも簡単なので親子で楽しめますし、ちょっとした仕掛けがあったり、イラストの雰囲気も日本の絵本とは違ったりして、プレゼントにも最適ですよ。
――大人に贈る場合はいかがでしょうか。
まずは、ご用途や贈り相手のお好みを伺います。入院中のお見舞いであればご病気を忘れられるような、たとえば今回ご紹介する『Michi』『Michi』のような世界観のもの。就職のお祝いでしたら『ゆうかんなアイリーン』『ゆうかんなアイリーン』のような勇気や元気が出るものなどですね。絵本には装丁デザインなども含め、モノとしての美しさ、味わいがあります。お子様用も大人用も、迷われたらぜひ、お気軽にご相談ください。
――最後に、瀬野尾さんにとって「絵本」とはどのようなものでしょうか。
売り場では、「これはパパ(ママ)が好きだった本だよ」とお子様に丁寧にご説明するお客様をたくさんお見かけします。自分が子どもの頃に読んで楽しんだものは、やはり大人になってから出会ったものとは違った特別な思いがあると思いますから、それを次の世代に繋いでいけることは嬉しいです。絵本はそうした喜びを与えてくれるものだと感じています。新しい作家さんにも、これから何十年と読み継がれるような息の長い作品を生み出してほしいと願っていますし、本屋として、そのお手伝いができればと思っています。
作:junaida
福音館書店刊
2,530円
両面表紙になっていて、男の子と女の子、それぞれ道をたどって旅をします。文字はありませんが美しい絵柄からそれぞれの物語が伝わってきます。作家のjunaidaさんの初となる絵本で、ひと目見て「すごい」と思い、上司に掛け合ってフェアを開催して300冊を完売した思い出深い作品です。
作:ウィリアム スタイグ/翻訳:おがわ えつこ
らんか社刊
1,760円
少女のアイリーンが、仕立物屋さんのお母さんの代わりにドレスを届けに行く物語です。雪の色がどんどん変化し、行く手の困難さが表現されています。子ども目線だと冒険物語、母親目線では子どもを送り出す不安を感じ取れ、読み手により異なる物語にも見えます。私もドキドキしながら読みました。
作:J.R.R.トールキン/
編集:ベイリー・トールキン/
翻訳:瀬田貞二・田中明子
評論社刊
3,080円
『指輪物語』の著者が、20年以上にわたって我が子のためにサンタクロースになりきって書いたお手紙集です。寒いところに住んでいる設定に沿った震えた文字や、添えられたイラストも凝っています。途中で登場人物が増えたり、個人的なエピソードが挟まれていたりと、作者が楽しんで書いていたことがひしひしと伝わってきます。
作:ハンス・クリスチャン・アンデルセン/
絵:サンナ・アンヌッカ/翻訳:小宮由
アノニマスタジオ刊
2,420円
Marimekkoのデザイナーとしても活躍する、アンヌッカが手掛けた1冊です。ビジュアルも美しく、お部屋に置いたり恋人へのプレゼントにもいいですね。小さなモミの木が「早く大きくなりたい」と願い、やがてクリスマスのために切られてツリーになるのですが??アンデルセン物語らしくビターな印象です。
文:クレメント・C・ムーア/絵:ウィリアム・W・デンスロウ/翻訳:わたなべしげお
福音館書店刊
1,980円
著:クレメント・C・ムーア/
絵:ロジャー・デュボアザン/翻訳:小宮由
主婦の友社刊
1,320円
この2冊は同じ詩をもとにした絵と訳が違う絵本で、このような形態の絵本はたくさん出版されています。私がクリスマステーマの作品でいちばん好きな、デンスロウの『クリスマスのまえのばん』のサンタさんは、赤い服ではありませんがクラシカルでユーモラスな雰囲気です。デュボアザンの『クリスマスのまえのよる』は、靴下に入れられるように、縦長の判型になっているのもポイントです。訳を読み比べるのも楽しいですよ。
作:junaida
福音館書店刊
2,530円
両面表紙になっていて、男の子と女の子、それぞれ道をたどって旅をします。文字はありませんが美しい絵柄からそれぞれの物語が伝わってきます。作家のjunaidaさんの初となる絵本で、ひと目見て「すごい」と思い、上司に掛け合ってフェアを開催して300冊を完売した思い出深い作品です。
作:ウィリアム スタイグ/翻訳:おがわ えつこ
らんか社刊
1,760円
少女のアイリーンが、仕立物屋さんのお母さんの代わりにドレスを届けに行く物語です。雪の色がどんどん変化し、行く手の困難さが表現されています。子ども目線だと冒険物語、母親目線では子どもを送り出す不安を感じ取れ、読み手により異なる物語にも見えます。私もドキドキしながら読みました。
作:J.R.R.トールキン/
編集:ベイリー・トールキン/
翻訳:瀬田貞二・田中明子
評論社刊
3,080円
『指輪物語』の著者が、20年以上にわたって我が子のためにサンタクロースになりきって書いたお手紙集です。寒いところに住んでいる設定に沿った震えた文字や、添えられたイラストも凝っています。途中で登場人物が増えたり、個人的なエピソードが挟まれていたりと、作者が楽しんで書いていたことがひしひしと伝わってきます。
作:ハンス・クリスチャン・アンデルセン/
絵:サンナ・アンヌッカ/翻訳:小宮由
アノニマスタジオ刊
2,420円
Marimekkoのデザイナーとしても活躍する、アンヌッカが手掛けた1冊です。ビジュアルも美しく、お部屋に置いたり恋人へのプレゼントにもいいですね。小さなモミの木が「早く大きくなりたい」と願い、やがてクリスマスのために切られてツリーになるのですが??アンデルセン物語らしくビターな印象です。
文:クレメント・C・ムーア/絵:ウィリアム・W・デンスロウ/翻訳:わたなべしげお
福音館書店刊
1,980円
著:クレメント・C・ムーア/
絵:ロジャー・デュボアザン/翻訳:小宮由
主婦の友社刊
1,320円
この2冊は同じ詩をもとにした絵と訳が違う絵本で、このような形態の絵本はたくさん出版されています。私がクリスマステーマの作品でいちばん好きな、デンスロウの『クリスマスのまえのばん』のサンタさんは、赤い服ではありませんがクラシカルでユーモラスな雰囲気です。デュボアザンの『クリスマスのまえのよる』は、靴下に入れられるように、縦長の判型になっているのもポイントです。訳を読み比べるのも楽しいですよ。
瀬野尾真紀(せのお・まき)
代官山 蔦屋書店 キッズコンシェルジュ
プロフィール
2013年から代官山 蔦屋書店勤務。未来に豊かな児童書を残すべく、キッズフロアのフェアやイベントの企画運営を通して出会った多くのクリエイターを始め、「今、まさに頑張る」作り手の応援を続ける。2022年、「えほん博」の立ち上げに参加。 代官山 蔦屋書店では、11月16日(水)から「Stories For A Winter Night」と題して冬の全館フェアを開催予定。
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