自分の脚で、初めて見る世界に触れることができるのがいちばんの魅力です。小回りが利くランニングなら、ちょっと気になっていた場所にも立ち寄ることができますし、たくさんの新たな発見ができて楽しみが広がります。これは海外でも同じで、走りながら探索すれば徒歩の2～3倍は観光地を回れますし、走ることは観光との相性も良いと感じています。
また、大会への出場ということですと、年齢に応じた目標を設定できて、それに向かって挑戦できることではないでしょうか。マラソンという競技は、1位ではなく3位以内を目標にしてもいいし、もっと言えば年代別のトップや、ライバルに勝つことを目指してもいい。また、自己記録やコースのベストを更新するなど、他者との勝負のほかにも、たくさんの目標を設定できますから。

公務員の頃から言い続けてきた2時間7分27秒の自己ベストを、2021年に8年ぶりに更新したのですが、そのときに、2時間5分ぐらいまでは届きそうな手応えを感じました。2022年はハーフマラソンなど他種目の記録も更新できたので、それらの記録をさらに伸ばしていきたいですね。もちろん、国内外の大会で再度上位に入り、メダルを手にすることも諦めてはいません。
自分の可能性を信じて挑戦したい、そのために市民ランナーを終えてプロ契約を結んだという経緯がありますし、これまでのレースを通してさまざまな場所を走り、色々な経験を積んできているからこそ、その経験を色々な形で還元していきたい。プロになって国内の講演やイベントへの参加も増やすことができましたし、競技の普及という点でも、自分がやれることはまだまだあると感じています。

生活習慣では平均7時間半の睡眠時間をしっかり確保することを続けていて、睡眠を大事にしています。初心者の方は、トレーニングにサイクリングを取り入れてみるのもいいですよ
（川内さん）

「楽しんでしまう」ということですね。確かに、「毎週のようにレースに出ていて疲れないの？」とはよく聞かれますが、遠征に出ることは、マラソンと旅行という私が大好きなことを両方楽しめるチャンスです。高校時代から、日本全国の市民マラソン巡りをしたいと考えていました。強くなって結果を残せば世界中の大会から招待されて、もっと色々な国に行ける。そんな相乗効果をモチベーションに変えてきたこともあって、スランプに陥りそうなときには、どうしたら少しでも楽しく走れるのかを考えます。
記録が伸ばせなかった時も、高校生のときに夢見ていた国内外を飛び回る生活が送れているいまはすごく恵まれているし、走ることを諦めるべきではないなと。強い気持ちをキープするために、色々なことを工夫して継続すれば芽が出るはずだと自分を鼓舞していました。

いつまで走り続けるのかということでしたら、それはもう、生涯現役です。ただひとつ、実はボストンマラソンで優勝したときに大きな目標を持てました。この大会で優勝すると、50年後の招待選手の権利を獲得します。私は31歳で優勝しましたから、81歳でボストンマラソンに招待選手として出場し、フルマラソンを完走する（笑）。これが最大の目標です。